【毎日書評】思考のスピードをあげてスマートな話し方を見つけるために「不安を解消するヒント」
会議やミーティングの席などで「あなたはどう思いますか?」と問いかけられたとき、ことばに詰まってしまったり、あるいは怖気づいてしまったりすることはあるもの。 『Think Fast, Talk Smart 米MBA生が学ぶ「急に話を振られても困らない」ためのアドリブ力』(マット・エイブラハムズ 著、見形プララットかおり 訳、翔泳社)の著者も、そのことを認めています。ほとんどの人にとって、自然発生的なコミュニケーションは恐怖なのだと。 過去の失敗によって受け答え能力の低さを思い知らされた結果、なりゆきで話すことに強い恐怖を抱くようになる人は決して少なくないということ。いずれにしてもそうなってしまうと、あがってしまってパフォーマンスはさらに悪化し、緊張感がいっそう高まり、ますます話し下手になるという悪循環に陥ることになるでしょう。 しかし、希望は残されているようです。 自然発生的なコミュニケーションに最も重要なのは、もともとの適性でも性格でもなく、話すという課題へのアプローチ方法です。 思考のスピードを上げ、よりスマートな話し方を見つけること(Think Fats, Talk Smart)は、誰にでも可能です。 人当たりが良く、社交的で、話し上手だと自負している人も、本書で紹介するメソッドと、文脈ごとに適した型を取り入れれば、さらに自信と余裕を持てるようになります。(「はじめに」より) つまり本書では、自然発生的なコミュニケーションに自信が持てるようになるための実践的な方法が紹介されているわけです。 きょうは、いきなり話そうとする際に立ちはだかる障害の理解に効果的だというPART1「理論編 即答力を鍛える6つのステップ」のなかから、基本的な考え方が紹介された第1章「気持ちを落ち着ける──不安感を手なづけよう」に焦点を当ててみたいと思います。
不安を解消する2本立てのアプローチ
著者によれば、即興性を求められる受け答えに限らず、あらゆるコミュニケーションに共通するポイントがあるのだとか。押し寄せる強い不安への対処方法をまずマスターしなければ、上達は望めないということ。 緊張に身体が支配されると、そのことに注意力や気力、任務遂行能力が奪われてしまうことになります。それどころか、「不安スパイラル」に陥る可能性もあるでしょう。自分の欠点を責め、自信を失い、孤独感や無力感に苛まれ、周囲から取り残されたような気分になり、不安感がいっそう高まってしまうわけです。 こうした悪循環が極度に達すると、発言が求められる場でも話せなくなり、不安を覚えると、受け答え能力が失われてしまうもの。しかしそれでも、不安をやわらげるテクニックはあるそうです。 目標は不安感の完全な排除ではなく、受け答えへの影響をなくすこと。緊張せずにいられないシチュエーション自体は必ず存在するものなので、それでよいわけです。 少しの緊張ならプラスに作用します。いくつかの研究で、大きすぎるストレスは成功の邪魔をする反面、ある程度のストレスは意欲を高めることが証明されています。 ややストレスや不安を感じている程度の時、身体にエネルギーが満ち、意欲がかき立てられ、注意力と集中力が高まり、周りの状況に一段と敏感になります。ネズミを使った実験では、一時的なストレスによって脳の中に新たな神経細胞が生まれ、記憶力が高まる可能性が示唆されています。(30ページより) なお著者は自身の経験から、話すことへの不安を解消するには2本立てのアプローチが有効だと述べています。1つ目は、とっさに生じる不安の症状への対処。2つ目は、不安の根本的なな原因への対処。しかも、症状を緩和できるテクニックはいくつかあるそうです。(29ページより)