規制強化で新潮流、製紙メーカー非フッ素耐油紙で攻める
【大王製紙】水中で分解・再利用
「FS耐油紙FF」を水の中で撹拌したもの。残留物がなくリサイクル性に優れ、端材などを古紙として再利用できる(大王製紙) 大王製紙は6月、フッ素を含まない耐油剤を使った「FS耐油紙FF」を発売した。同製品はサラダ油、オリーブ油など多様な種類の油に対し、従来のフッ素系耐油紙と同様に紙の裏面に油が染み出さない耐油性能を付加した。標準品の一つに片艶紙を採用し、企業や商品のロゴなどの印刷適性に優れたタイプを用意する。 リサイクル性も追求した。水の中で分解しやすい離解性を持たせ、紙を包装用紙に加工する際に発生する端材などを回収、古紙として再利用できる。エンドユーザーや耐油紙を包装用紙に加工する企業が、廃棄ロスの低減など環境に配慮した製品であることを訴求できる利点がある。 FS耐油紙FFは同社主力工場の一つ、可児工場(岐阜県可児市)で全数を生産する。同工場はもともと多品種に対応できる生産設備を備えており、標準品以外の「顧客の多様なニーズにも応えられる体制になっている」(大王製紙包装用紙部の小林正幸氏)。こうした環境を生かし、高付加価値品の開発などを積極的に進めていく方針だ。
【日本製紙】パピリアクリスピー性保持/【特種東海】耐油剤の主成分に天然物
日本製紙子会社の日本製紙パピリア(東京都千代田区)も、7月に「パピ・タイユ(FF)」の販売を始めた。紙を構成する各繊維にPFASを含まない耐油剤を付着させることで、紙の隙間を埋めずに耐油性を持たせることに成功。水蒸気が通過しやすい構造により、温かい食品を包装した際に結露が発生しにくく、フライドチキンなど揚げ物の特性であるクリスピー性を保持できるのが特徴だ。5年後に年700トン以上の販売を目指している。 特種東海製紙は他社に先駆け「NF耐油紙」を05年に投入した。主成分が天然物の耐油剤を採用し、高い耐油性と通気性を持たせた。生産面では食品に使われることを踏まえ、衛生管理を徹底しているのが特徴だ。 具体的には同製品を生産する三島工場(静岡県長泉町)においてクリーン度の高い専用の抄紙機を使い、異物や微細な塵などの混入を防止。さらに建物の5階で生産することで、工場内への虫の飛来を防いでいる。非フッ素耐油紙の需要拡大を見通し、製品ラインアップの拡充や営業体制の強化を進める。