【第81回ベネチア国際映画祭】ペドロ・アルモドバル新作は死を見つめる物語、初の英語長編劇に18分の喝采 ブラピ&ジョージ・クルーニーは「ウルフズ」お披露目
現在開催中のベネチア国際映画祭も後半に入り、ペドロ・アルモドバルのコンペティション参加作品、「The Room Next Door」が披露され、18分の最長スタンディング・オベーションを得た。主演のジュリアン・ムーアとティルダ・スウィントンに囲まれ、ピンクのスーツ姿で現れたアルモドバルは、感動の面持ちを隠さなかった。 本作はアルモドバルにとって3年ぶりの長編で、初の英語長編劇ということで注目を浴びていた。ニューヨークに暮らす作家のイングリッド(ムーア)は友人から、かつての盟友でナイトライフを一緒に楽しんでいたマーサ(スウィントン)が癌になったという話を聞き驚く。さっそくマーサに連絡を取り再会したのが縁で、イングリッドは独り身のマーサの最後の日々に付き沿うことになる。 これまでのアルモドバル作品以上に、人生の最後の日々を見つめた本作は、死に直面した人間がいかにそれに対処し、また周りの人間がそこからどんな影響を受けるかを見つめた感動作。ふたりの女優の名演ぶりが、映画を牽引するとともに、エドワード・ホッパーの絵画を思わせるような、美しくも物悲しさを秘めた映像に心を奪われる。 アルモドバルは記者会見で英語劇に挑んだ理由を、「新しいことに踏み出したかった。蓋を開けてみれば、心配は杞憂に終わった。ふたりの俳優が、わたしが望む映画のトーンを完璧に理解して演じてくれたから」と語り、さらに自身の安楽死に対する姿勢も明らかにした。 アウト・オブ・コンペティション部門では、2008年の「バーン・アフター・リーディング」以来の顔合わせとなったブラッド・ピットとジョージ・クルーニーによるApple TV制作の「ウルフズ」が披露された。ふたりはまるで漫才コンビのように陽気にレッドカーペットに現れ、クルーニーに至ってはカメラマン席を訪れて一緒に座り込むなど、ファンのみならず関係者もフィーバーさせた。またふたりのサインをねだる人々が後を立たず、上映が30分近く遅れる事態となった。 本作は孤独な一匹狼の「始末屋」が、ひょんなことから同じ事件の後始末に呼ばれ顔を合わせたことで、ともにマフィアから狙われる羽目になる顛末を描いたアクション・コメディ。アメリカでは一部限定の劇場公開の後に配信される。記者会見でクルーニーはこれに関して失望を隠さず、「多くの人に観てもらえる機会がある一方、限定でしか劇場公開されないのは残念だ」と答えた。 さらに彼とピットの本作での報酬に関して、間違った額が報道されていることに触れ、「我々の報酬額は、報道されているよりも何百万ドルも下回ったものだ。ここでとくに強調したいのは、こういった報道が業界によくない影響を与えること。こんなに高額が掛かると思われるのは、制作側にとってもよくない」と憂えた。Apple TVはすでに続編の制作を発表している。(佐藤久理子)
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