「名誉殺人」の背後に潜む現代インドの「トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)」
インドの名誉殺人の被害者は、ダリト男性とカースト・ヒンドゥーの女性という組み合わせがほとんどである一方で、ダリト女性は性暴力の対象となることが圧倒的に多い。写真はレイプ被害を受けて亡くなったとされる少女の追悼集会=撮影2021年8月(C)EPA=時事
インドでの残虐なレイプ事件が報道される度に、やっぱりインドは危ない国だとか、遅れている国だという印象が広まってしまうのが残念でならない。この文章も、そんなインドの悪いイメージを強化してしまいそうで、ビクビクしている。実際のところ、普通に旅行したり生活したりする分には、インドが女性にとって危険すぎる場所であるとは思われない。もちろん窃盗などの犯罪は日本よりもずっと多いが、旅行者が性犯罪を含め身体を傷つけられるような犯罪が極端に多いとは思えないのだ(「思えない」としか言えないのは後述するようにインドでの犯罪件数のデータが信用できないからである)。 もちろん非常に保守的な社会だから、女性が一人で旅行しているとギョッとされたりはする。またインド、特に北部では、若い女性が若い男性とおしゃべりすることは極めて稀なので、こちらは気軽に話したつもりでも、脈があると誤解されてしまうこともある。だが、子連れで旅行された方など、インド人がいかに他人の子供に親切かを実感されたのではないだろうか。ギスギスしがちな日本社会に比べておおらかで温かい人が多いのがインドだと思う。
本文:5,241文字
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池亀彩