雅楽師・東儀秀樹さん「100%信頼してもらえる親でいること」が子育てに最重要です|STORY
子育てに悩む親御さんへ、メッセージ
――子育てを苦痛に思う親御さんに何か一言お願いします。 例えば、18、19歳で苦痛というのは重症で、そこにコミュニケーションがないと大問題なのだけど、例えばもっと小さい頃だったら、子どもって自分の分身みたいなものじゃないですか。例えば、子どもだからする遊びとか、欲しがるものとか、興味を持つものとかをまた親になって目にすると、また同じ人生をリスタートさせてもらえているように感じませんか? 「そういえば、昔こんなことしたなぁ」って。 自分の少年時代、少女時代に戻してくれるのが子どもの与えてくれた時間だと思うんです。この、子どもに与えられている時間が二度と味わえないと思うと、愛おしくなってきませんか? 夜泣きする赤ちゃんの顔だって、2、3ヶ月したらもう見られないし、泣き声も変わるし。声変わりする前の男の子の声なんて、たっぷり味わっておかないと二度ともらえないよ。だから、その巻き返しのできない時間の瞬間瞬間を愛おしく思えば、子育ての同じ苦行ばかりをずっと永続的に繰り返すわけではなく、だんだん子どもは成長していくのだから、先々の楽しみになると思いますね。 ――思春期でやんちゃなお子さんに手を焼く場合はどうしたら良いですか? あまりに人に迷惑をかけたり傷つけたりしたらガツンと言わなければいけないこともあるでしょうね。その時は、思いっきり本気で言わないといけません。「他人を傷つけているからではなく、人を傷つけているお前が傷つくのが許せない」という気持ちを持って。人が言ったからではなく、あなたの人生のためにやめなさいということを言いたいんです。大声を出している子どもに対しても、「ほら、怒られるから静かにしなさい」という親がいるけど、怒られるからではなく、大声を出すからいけないのだということを教えたり。「にらまれるからやめなさい!」ではなくて、「にらまれる前にやめることがあるでしょう?」っていうことですね。 ――仲良し親子でありながら、親としての威厳を保つコツは? 友達親子ってよく言われるのだけど、ちっちも僕もそういう言われ方は嫌いなんです。同じような格好をして、同じ趣味で、仲良いでしょ? っていうのは世の中いっぱいいるけど、親と子は同等ではなく、子がいつでも親を尊敬したいという状況を親が体で伝えていくっていう姿勢が大事です。「大人になったら、こういう大人になりたい」っていう、友達には求めないものがあって。そういう距離感がいつでもあった上でめちゃくちゃ仲が良いっていうのが理想的だと思います。 例えば、特に女子の親子で同じアイドルを追いかける人など、それはそれでいいと思うので否定はしないのだけど、友達親子として親が同等と言い続けると子どもも親と同等だと勘違いしてしまっていたりするケースが多いのですよね。親は絶対的に先を行く存在であって、見本を示しながら、命を捨ててでも子を守るっていう覚悟があるべきだと思っているんです。親が子どもと同等な友達だとしたら、そこまでの覚悟は持てなくなるでしょう? ――ちっちさんと仲が良いですが、仕事でもプライベートでも一緒にいて煙たがられたりはしませんか? ないです。すごく一緒に居たがりますし、僕がめちゃくちゃ変なふざけ方をしても、いつも喜んで。不思議がったりもしてるけど、「そういうことができる人に私はなりたい」っていつも言っています(笑)。 撮影/沼尾翔平 取材/嶋田桂以子