待望のエイズ予防薬が日本で承認―曝露前予防(PrEP)の効果と使用方法とは
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって発症するAIDS(エイズ)はかつて「死の病」とされていましたが、現在は治療薬の進歩により、HIV感染者でも日常生活が送れるようになっています。 さらに2024年8月28日には、HIV感染を予防するための新しい手段として日本国内で「ツルバダ配合錠」が曝露前予防(PrEP、プレップ)薬として薬事承認されました。 「曝露前予防(PrEP)」とは、HIV感染リスクが高い人が抗HIV薬を毎日服用することで、HIV感染を予防する方法です。 今回は、東京都新宿区で性病の検査・治療だけでなく予防にも力を入れている、イーヘルスクリニック新宿院の天野方一院長にお話を伺いました。
◇HIV感染のメカニズムとエイズ発症の流れ
HIVは主に性的接触や血液を通じて感染します。感染してからしばらくは症状が現れず、その後エイズを発症します。エイズになると免疫機能が破壊され、重い肺炎やがんなどにかかりやすくなります。
◇抗HIV薬の進歩
1987年に登場した最初の治療薬以来、HIV治療は大きく進展し、副作用の少ない薬が次々と開発されてきました。 現在では治療を続けていれば通常の生活を送ることができ、他者にHIVを感染させるリスクも大幅に減少させられるようになっています。
◇HIV予防における曝露前予防(PrEP)の重要性
HIV感染への対策として有効なのは、感染後の発症や他者への感染対策だけではありません。予防も非常に重要になります。 2030年までのエイズ流行終息を目指している国連合同エイズ計画(UNAIDS)でも予防を非常に重視しており、その具体的な方法として有力視されているのが「曝露前予防(PrEP)」です。 PrEPは、HIVに感染するのを防ぐために、HIVにさらされる前に抗HIV薬を服用する方法です。簡単に言うと、「HIV感染を防ぐために毎日飲む薬」です。UNAIDSが掲げる目標を達成するためには、PrEPの普及が鍵を握っているといってよいでしょう。
◇PrEPの国際的な普及状況
世界保健機関(WHO)はPrEPを推奨しており、欧米ではすでに薬事承認を受け、低価格で利用できる体制が整っています。 日本国内でも2024年8月28日に「エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩」(商品名:ツルバダ配合錠)が予防薬として承認されました。ただし、予防目的での使用のため、公的医療保険の適用はされません。 PrEPは、HIVが体に入ってきたときに、ウイルスが広がるのを防ぐための薬です。これにより、HIV感染のリスクを大幅に減らすことができます。 PrEPは、HIV感染のリスクが高い方に特に有効です。 ・HIV陽性のパートナーがいる方 ・複数のパートナーと性行為を行う方 ・コンドームを使わない性行為をしている方 は、PrEPによって感染リスクを低くコントロールするべきでしょう。