女性の歌声に希望を見いだした1990年代、進化続ける「Get Wild」 40周年、Jポップのレジェンド小室哲哉さんが語る〝新しい音〟とは
40周年を迎えた難しさもある。「小室さんっぽくない音楽を、という依頼は多分誰もしないでしょうね。僕も、〝僕らしさ〟から外れないようにしていますし、もう外れられないのかもしれないですけど…」と苦笑いを浮かべる。依頼を受けて、喜んでもらえたら「それで十分」と思うことも多い。それでもなお、AIでは作れないような、自分でもどこから出て来たのか分からない新しい曲を作れることが、まれにある。「発見というよりちょっとしたイノベーション。発明みたいなものに憧れていることはもちろんあります」 TMの40周年公演で披露した「Coexistence」はそんな1曲だ。「ツアー中に新たな曲を追加したいと思って、車で移動中にとっさに頭の中で作った。それにしてはすごく良かった。メロディーとか歌詞もいらなくて、それだけで気持ちいい。そういうリフができるのは10年に1曲ぐらいかな」 次々と新しい音楽が生まれ、インターネット上に蓄積されていく現代。AIを使えば、既存のアーティストの作風に似せた音楽だって容易に生成できる。生身のアーティストが新しいことに挑む余地はもはや残されていないのかもしれない。それでも小室さんは新しい音を探している。人間らしく。