女性の歌声に希望を見いだした1990年代、進化続ける「Get Wild」 40周年、Jポップのレジェンド小室哲哉さんが語る〝新しい音〟とは
シンプルな旋律を巧みに反復させて曲を組み立てていく。小室サウンドの軸にあるのはそんな「リフ」だ。例えば、イギリスのハードロックバンド、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウオーター」のギターのイントロのように。あるいは、ベートーベンの「運命」の「ジャジャジャジャーン」もリフみたいなものだと小室さんは説明する。TMの代表曲「Get Wild」のイントロも、耳を捉えて放さないリフの典型だろう。「リフが良ければ覚えやすいし、自然と口ずさめれば大ヒットになる。僕の曲作りはメロディーからじゃない。全てはリフからです」 ▽バージョンアップを続ける曲 1987年にリリースされた「Get Wild」はアニメ「シティーハンター」のエンディングテーマだった。「とにかくアニメの制作陣の意向に沿うものを、と思って作った。これが僕たちの代表作になるとも、皆さんが歌い続け、聞き続ける曲になるとも思っていなかったですね」
ビルボードライブ東京の公演でも、シンセサイザーとチェロで演奏された「Get Wild」に大きな歓声が上がった。「バージョン41か42かな。テクノロジーが進化しているので、そこに合わせていきたくなる。スピード感も音も光も、より繊細により細かくできる。そういう技術の変化に常に対応していきたい。自分なりのバージョンアップを続けてきて、今一番気に入っているのが(ネットフリックスの映画版で使われた)『Get Wild Continual』ですね」 ▽少女の思いをすくい取る TM NETWORKで1980年代後半に頭角を現した小室さんが圧倒的な存在感を示したのは1990年代半ばだ。TKプロデュースのCDが次々とミリオンセラーを記録した。「シンガー・ソングライターとかラッパーのように自分の体を使ってメッセージを伝える人間ではなかった。矢面に立って語りかけてくれる人がいて完成するというのが僕の立場でした」