混迷の衆院選「保守」と「リベラル」をキーワードに各党の政策を読み解く
衆院選が10日に公示され、22日の投開票に向けて論戦の火ぶたが切って落とされます。安倍首相が決めた衆院解散をきっかけに、野党第一党の民進党が「寛容な改革保守」を掲げる希望の党とリベラル系の受け皿となった立憲民主党に分裂。この間の経緯の中で「保守」と「リベラル」という言葉がクローズアップされました。ここでは、この二つの言葉を中心に、公約や政策だけではない角度から政党の立ち位置や目指す国家像のイメージを見てみます。政治学者の内山融・東京大学大学院教授に寄稿してもらいました。
「小さな政府」と「大きな政府」
10月10日、衆議院総選挙が公示される。投開票は10月22日である。 結成されたばかりの希望の党が民進党を事実上吸収合併し、残留メンバーを中心に立憲民主党が結成されるなど、事態は流動的になっている。各党が公約を発表しているが、新党が増えた上に争点が多岐にわたっているため、どの党がどのような立場なのか、分かりにくく感じている方も多いのではないだろうか。そこで本稿では、「保守」と「リベラル」をキーワードとして、各党の政策を読み解いてみたい。 まず、「保守」と「リベラル」とは何か、経済政策と外交・安全保障政策におけるそれぞれの立場を中心に見ていこう。 「保守」は、経済政策では、市場原理を重視して政府の役割を制限しようとする「小さな政府」志向である。具体的な政策としては、構造改革、規制緩和、歳出削減などが挙げられる。実は、細かくいえば保守にも「伝統的保守」と「新保守」があり、前者は国家の権威や共同体のつながりなどを重視するのに対し、後者は市場志向の新自由主義に立つ。この両者が混同されている面もあるが、現在の「保守」は、基本的には「小さな政府」に特徴づけられるといってよいだろう。この立場では、政府は人々の生活や企業の行動にあまり関与せず、税金や社会保険料といった国民負担も小さくなるが、社会保障などは人々の自己責任に任される部分が大きくなる。 外交・安全保障政策では、防衛力の増強や日米同盟の強化を目指す立場である。典型的なのは、憲法9条の改正により自衛隊の存在を明記するであるとか、国防軍を創設するといった主張である。 一方「リベラル」は、経済政策では、社会保障の充実や再分配の強化などを目指す「大きな政府」志向である。政府が人々の生活水準の保障や格差是正に積極的な役割を果たす立場だが、その分政府の介入が増え、国民負担も大きくなる。 外交・安全保障では、自衛隊や日米同盟の役割を限定する立場であり、二国間同盟よりも多国間の協調を好む傾向がある。憲法に関しては基本的に護憲派であり、特に憲法9条の改正には反発が強い。