混迷の衆院選「保守」と「リベラル」をキーワードに各党の政策を読み解く
「リベラル」の中での各党分布
リベラルに位置づけられるのは、立憲民主党、社民党、日本共産党である。 民進党は保守とリベラルの寄り合い所帯であったが、保守系の議員が希望の党に合流したため、リベラル系の議員が立憲民主党を立ち上げた。同党の枝野代表は、9月に行われた民進党代表選挙で「お互いさまに支え合う社会」として社会保障や人々の連帯を重視する立場を訴えた。安保法制を前提とした安倍政権下での憲法改正にも強く反対してきている。 上記のとおり日本における「リベラル」は「社会民主主義」にかなり近いので、社民党がリベラルに位置づけられるのはいうまでもないだろう。今回の公約でも、「ボトムアップの経済政策」や雇用の安定を訴えるとともに、護憲派の立場を打ち出している。 日本共産党も、社会保障や教育の拡充、富裕層への資産課税の強化、憲法改正反対、安保法制廃止などを公約で打ち出している。(ただし、本来の用法からすれば共産主義と自由主義は親和的でないため、日本共産党を「リベラル」と呼ぶのは違和感が残る。「リベラル」の語が拡大解釈されているようにも思えるが、現在の日本政治では「保守-リベラル」を軸に政党を位置づけるのが通例となっているため、本稿でも同党をリベラルに位置づける)
保守とリベラルが混在する希望の党
今回の衆院選で台風の目となっている希望の党であるが、同党の位置づけは難しい。経済政策面について見ると、党代表の小池知事が「しがらみのない政治」で大胆な改革を行うべきだとの主張をしてきており、衆院選公約でも規制改革の断行が掲げられていることからは、新自由主義的な保守の立場が読み取れる。一方、公約ではアベノミクスに代わる「ユリノミクス」の柱として、ベーシックインカム(最低限所得保障制度)の導入が掲げられている。これは生活に最低限必要なお金を全国民に支給する仕組みであり、これまでリベラルが主張してきた政策である。 外交・安全保障政策に関しては、憲法9条を含む憲法全体の見直しを進める旨や、「現行の安全保障法制は憲法にのっとり適切に運用する」として安保法制を是認する立場を公約で打ち出している。この点では典型的な保守である。一方、公約では「ダイバーシティ社会の実現」も柱としている。ダイバーシティとは直訳すれば多様性であるが、多様な生き方や価値観を認めていく姿勢はリベラルに特徴的なものである。 要するに、希望の党の政策は保守とリベラルの両者を包含する広範なものであり、一概にどちらかに分類することはできない。同党の綱領に掲げられている「寛容な改革保守政党」という理念も非常に多義的である。国民の中にある多様な価値観をできるだけ取り入れようとしたのかもしれないし、今後連携する政党の選択肢をできるだけ広げようとしているのかもしれない。いずれにせよ、希望の党が今後どの方向に進むのか、注視が必要である。