新幹線の子連れ利用、あなたはどう思う?―専門家「子連れ専用車両の運行に必要なのは"指定席予約システム"の改善」
年末の帰省シーズン、子ども連れで新幹線を利用するシーンも少なくありません。今年11月に話題となったニュース記事では、子連れ利用の際に隣席から「最悪」「ハズレ」と心ない呟きが聞こえたそうで、コメント欄には「子連れ専用車両があればいいのでは」という声が集まりました。そこで鉄道ジャーナリスト・梅原淳さんに、子連れ専用車両の運行にあたっての課題を聞きました。梅原さんは「新幹線の指定席予約システムが改善されれば、さまざまな新幹線トラブルが解消される可能性がある」と期待を語ります。“新幹線の子連れ利用“についてあなたはどう思いますか?コメント欄であなたの意見を教えてください。(Yahoo!ニュース Voice)
“指定席予約システム”の現状課題と、未来への期待
――最近、子ども連れでの新幹線利用に関して、さまざまな意見が飛び交っています。「子どもの声」に関するトラブルは昔からあったのでしょうか? 梅原淳: いいえ、最近のことだと思います。昔の新幹線は、そもそもうるさい乗り物だったんです。振動音や走行音が激しく、隣にいる人と会話するためには大声を出さないと聞こえないほどでした。車両全体がざわついていたので「子どもの声が気になる」という感覚を抱きにくかったのかもしれませんね。しかし、最近の新幹線は走行に関する研究が進み、車両はどんどん静かになっていきました。時間をかけて少しずつ騒音が改善されていったので、このような変化を実感している人は少ないと思います。 ――「子連れ専用車両があればいいのでは」という意見に対して、鉄道の専門家としてどう思いますか? 梅原淳: 子連れ専用車両を設置することは、子連れの方々にとっても、静かに乗車したい方々にとっても、非常にメリットがあると思います。長期休みや年末年始の時期などに、一部の路線で「お子さまづれ専用車両」「ファミリー車両」などが用意された実例もあります。 ただ、子連れ専用車両の安定した運行にあたっては大きな課題があります。今の指定席予約システムでは、子連れの方々の新幹線利用状況を正確に把握することができないんですね。どのくらいの人数が、いつ、どうやって利用しているのか、鉄道会社もわかっていない状況なんです。そのため、子連れ専用車両を用意するにしても、どれくらいの規模が必要になるかわからない。新幹線の客層は平日と休日とで全く違うので、せっかく用意したのに利用されないということになっても困ってしまいますし、最適なバランスの調整は難しいです。 ――システムに問題があるということですが、指定席予約システムの現状について、具体的に教えてください。 梅原淳: JRの指定席予約システムは、飛行機の航空券などと違って、氏名・年齢・性別・国籍などを入力しなくても購入することができます。小学生の子どもが「子ども運賃」で乗っていることは判別できても、運賃が必要ない年齢の赤ちゃんを連れている大人を判別することができない。大人一枚としてカウントされるだけで、赤ちゃん連れなのか、ビジネス利用なのかわかりません。もちろん、男性か女性か、若者か高齢者か、日本人か外国人かもわかりません。 個人的に、この状況は改めていったほうが良いと考えています。もちろん個人情報保護の観点は必要ですが、新幹線内で快適なサービスを受けたい人にとっては、きっと必要なシステム改修になるでしょう。例えば、ユーザーが指定席を予約する際に「静かに移動したい」という要望欄にチェックを入れれば、静かな車両や、静かそうな属性の乗客が多い座席を提供してもらえる。「子ども連れ」という属性欄にチェックを入れれば、そういった人たちでも気兼ねなく利用できるように、子連れ属性が集まった座席を提供してもらえる。または、授乳用の設備などが近い座席を案内してもらえる。 このように、個々人の利用シーンに適した座席を、システムで振り分けられるような環境が理想ではないでしょうか。現在そういった配慮の対象になっているのは、車椅子を利用されている方だけなので、もっとさまざまなケースに対応できるように改善していければいいなと思います。(※一部の列車では女性専用席や特大荷物スペース付き座席などが設定されています) ――指定席予約システムがアップデートされれば、子連れ客以外にも多様なメリットがありそうですね。 梅原淳: どの列車にも女性専用の車両や座席が欲しいというニーズは、今も確実にあるでしょう。予約時に男性・女性が判別できれば、実現に近づく可能性があります。また、座席のリクライニングに関するトラブルも問題になっています。後ろの座席の人が大きなスーツケースを足元に置いているせいで、背もたれを倒すことができないというトラブルですね。これも、乗客の手荷物サイズの情報や、リクライニングを深く倒して利用したいか否かの要望情報が事前に入力されていれば、うまく解決できるかもしれません。2023年を迎えようとしている今、システムを使ってユーザーの課題を解決していける時代であってほしいと思います。