冨家ノリマサ インタビュー インディーズ映画ながら世界の映画賞を席巻した『最後の乗客』と大ヒット作品となった『侍タイムスリッパー』
一生懸命生きることが一番大事なこと
――脚本をすごく読んで出演を決めるとおっしゃっていましたが、監督や作家の人間力を読み解いて、作品に挑まれているということですよね。 はい、その為には本当に自分自身の俳優としての器が少しでも広くないと。頂いた役がどんなに素晴らしい役であっても、その役を演じる俳優がしょぼかったら脚本で描かれている役は絶対に超えられない。何割しか埋められないと僕は思っているので、日々、一生懸命生きることが一番大事なことだと、この歳になってやっと勉強しました。 ――『最後の乗客』の【遠藤】という役も、お客さんと向き合うことを大事にされていると思いました。 堀江監督が描かれた【遠藤】という役が、男手ひとつで一生懸命娘を育てている、どこにでも居るいいお父さんなんです。監督には「かっこよくなっちゃうから、かっこつけないで」と言われました。だからなるべく普通のお父さんが無骨ながら娘の為に一生懸命頑張っている、そんな小さなロウソクの炎が見えればいいかなと思いながら演じていました。この映画も『侍タイムスリッパー』同様、広がることを願っています。舞台挨拶も呼ばれたらどこにでも行こうと思っています。 ――今後、達成したい目標はありますか。 特に考えてないです。例えば「賞を取りたい」とか「ハリウッド作品に出演したい」とかそういうのは特にないです。強いていえば「いい作品に巡り合いたい」です。また今回の『侍タイムスリッパー』や『最後の乗客』のようないい作品に巡り合いたい。それが一番の幸せです。 この2作品は撮影中も本当に幸せでした。演じていて気持ち良かったです。台本を頂いて大変な役だけれども、撮影に入るまで色々なことを考えている時間も凄く幸せでした。そして、いい作品だと思って出演した映画をお客様が「良かったです」と言ってくれる。これ以上の幸せなことはないと思います。凄くそう思います。 ――今後、一緒に仕事をしてみたい監督などいらっしゃいますか。 安田監督と堀江監督です(笑)。このお2人とは合うんです。『ディア・ハンター』(1978)のマイケル・チミノ監督や『ソフィーの選択』(1982)のアラン・J・パクラ監督の現場はどんな感じなんだろうという興味はありますけど(笑)。あのような作品を撮る監督はどんな精神構造で、どんなふうに人を見ているのか?興味があります。人の見方が人間目線ではなく、俯瞰というか神目線で捉えているからこそ、あのような演出が出来るのかも?とも思いますし‥‥。映画監督は凄いですよね。安田監督も堀江監督も凄いと思います。 終始、様々なキャストに気を配り、観客へ感謝を忘れない冨家ノリマサさん。『侍タイムスリッパー』はもちろん、『最後の乗客』の舞台挨拶でも全体を見渡しながらトークを展開し、感極まって涙を流していました。作品に対してはもちろん、人への誠実さを大事にしている冨家さんの主演作『最後の乗客』。多くの観客に届いて欲しいと私自身も願う、一度観たら忘れられない愛に満ちた物語でした。
取材・文 / 伊藤さとり(映画パーソナリティ)