脱偏差値型の進路指導で県立進学校に起きた変化 長崎県立諫早高等学校「キャリア検討会」の成果
授業を変えなければ、生徒のよいところを見ることはできない
キャリア検討会の取り組みは注目され、今も多くの教育関係者が視察にやってくるが、「うちではできない。何か活動したいと思う生徒がいても、それをかなえる場が学校周辺にない」と言われることが多いという。しかし、そう考える必要はないと後田氏は話す。 「今、校内には生徒が企画したイベントや活動の勧誘ポスターがたくさん貼ってありますが、昔はそうした風景はなかったんです。先程お話ししたとおり、まずは地ならしとしてグローバル講演会を始めました。手作りで先生と生徒が一緒になって取り組んだ結果、生徒は自走するようになって後輩につなぐサイクルができ、誰もがやりたいことを気軽にできる学校になったのです」 グローバル講演会だけでなく、同校は、ルーブリックによる自己評価や進路探究スタンプラリーなど、生徒たちの主体的な活動を後押しするさまざまな工夫を重ねてきた。「改革に当たって、外部に頼る必要はありません」と後田氏は話す。 また、生徒たちに、「活動を突き詰めれば無知に気づき勉強し始め、勉強を突き詰めれば仲間を集めて活動したくなるもの。活動でも勉強でもどちらが先でもいいので、そうした転換が起こるくらい夢中に取り組んでほしい」と伝えることも大切にしているという。 そして、何より授業を変えていくことが重要だと後田氏は語る。学習指導要領の改訂を機に、同校では授業と評価を大きく変えたが、ここの変革はまだ道半ばだという。 「2年前から宿題をなくし、授業を変えるチャレンジを続けています。授業を変えなければ、ユニークな生徒は生まれませんし、教員も生徒のよいところを見ることができません。私は物理を担当していますが、実際、反転授業に転換したところ、生徒たちの『キャリアエリートの8項目』がよく見えるようになりました。ここが学校全体でクリアできたらキャリア検討会はよりよいものになると思います。また、専門性の高いメンターをもっと増やすことも大きな課題。私たちも、現在進行形で挑戦を続けています」 (文:國貞文隆、写真:長崎県立諫早高等学校提供)
東洋経済education × ICT編集部