数字で証明、女性登用は株価を上げる! 最新の調査研究から見えた多様性ある組織の経済合理性
もうひとつは、経営層の意識不足によるものと見ている。 「2023年からは有価証券報告書に女性管理職の数や男女の賃金差の開示が義務付けられるようになり、プレッシャーを感じている経営者は多いと思いますが、経営トップの中には過去の成功体験があり、女性を登用していくことのメリットが本質的に腑に落ちていないのではないかと見ています。それ故に皮相的な数合わせやリップサービスに終始しているのではないかと思うのです」
ジェンダード・イノベーションが組織改革の後押しになる
男性中心の上層部に女性を登用するなど、経営層が組織改革を進める意識はどのようにしたら生まれるのか。 ジェンダード・イノベーションを巡る企業活動を調査する清水由起さんは、「多くの企業は営利を目的とした組織であるため、女性を登用したり、未だ男性に偏る研究開発の分野に女性を増やすといった内部を変える動きは、ビジネスとして可能性を見出せてこそ加速するもの」と考える。 近年注目が高まるジェンダード・イノベーションは、生物学的・社会的な「性差」を考慮した分析を行いイノベーションを創出する概念だが、清水さんは「性差」というレンズをかけて市場を開拓することが、企業組織内のダイバーシティ推進の契機になると考える。 「とある国内の乳業メーカーでは、フェムテック(女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービス)市場が盛り上がる中で、ミルク成分に女性特有の体の悩みにアプローチできる可能性を見つけ、そこから女性研究者を増やして女性に向けた健康食品を開発しました。それ以外にも、市場の動向を見て、『この商品は男性だけでなく女性にも求められている』というニーズを見つけた時に、女性がマーケティングのトップに立ったり女性比率を高めた組織に変わるといった順番であることが多い。市場の動向や可能性によって組織が動くというのは女性登用に限った話ではなく、若い世代がターゲットになる場合は若い社員が積極的に登用される、といったことにも当てはまります」