新型GR86の進化に迫る! 人の顔がこんなに見えるクルマも珍しいワケとは
一部改良で、走りの質をアップした新しい「GR86」を、小川フミオがテストドライブ。限られた時間でわかった魅力を考える。 【写真を見る】新型GR86、実車の細部など(49枚)
「対話性にこだわった改良」
“スーパー”がつかなくても、ドライビングの楽しさがあるスポーツカーが欲しいなら、トヨタが手がける新しいGR86(ハチロク)がイイ。2024年7月12日、一部改良モデルが発表された。主張ある走りが味わえるところが大きな魅力だ。 今回、メディア向け試乗会が富士スピードウェイのショートサーキットで開催され、トップグレード「RZ」のマニュアル変速機に乗った。モータースポーツの現場からの声を反映した改良というが、洗練度も上がって、ドライビングの楽しさが増したように感じられる。 GR86は、トヨタがスバルと共同開発したモデル(スバルは「BRZ」)。現行の2代目は2021年に発売され、以降、モータースポーツのフィールドでの人気もかなり高い。今回は“現場”からの声にも耳を傾けた改良だという。 主な改良個所は下記のとおり。 ・サスペンションシステムにおけるダンパーの減衰力改良。 ・限界領域におけるステアリングフィールの向上。 ・シフト時のブリッピングのしやすさ向上(MT車)。 ・ダウンシフト時のエンジン回転数の許容領域拡大(AT車)。 ・タイヤの空気圧警報システム採用(RZとSZ)。 ・デイタイムラニングライト採用(RZ)。 GR86を勧めたいのは、基本的なドライビングの楽しさがギュッと詰まっているから。全長4.3mに満たないコンパクトなボディは、それでもロングフードとショートデッキという、伝統的なスポーツカーデザインの文法を守って、きれいに仕上げられている。 富士スピードウェイのショートサーキットで走れたのは、とてもよかった。加速力が試されるホームストレッチをはじめ、登り勾配の複合カーブと高速コーナーが組み合わされた、良いコースだからだ。 今回のGR86は、「ステアリングの操舵感が重い」という声に応えて見直した。 「対話性にこだわった改良」と、ガズーレーシングカンパニーで開発責任者を務める藤原裕也は話す。 「ハンドルを切っていたときも戻すときも(切れ角に対してタイヤがきちんと追従する)リニアリティを重視し、サーキットでは高速・高負荷走行時のリニアなアシスト性を、ダートやドリフト走行においては、スライドコントロールのしやすさやカウンターステア時のフィールを改善するなど、これまでの知見をしっかり入れました」 加えて見直したのは、ダンパーの減衰特性。大きな理由として、「サーキットで縁石に乗り上げたときも、走行に影響が出ないように」と、説明された。ダートなどでも走りがよくなりそうだ。 コーナリングにおいては、さらに、スロットルレスポンスの向上がはかられた。目的は、シフトダウン時にヒール&トー(ブレーキペダルを踏みながら右足のかかとでアクセルペダルを踏みこんでエンジン回転を合わせるテクニック)を、今まで以上にやりやすくするため、と、説明された。 私が少々驚いたのは、アクセルとブレーキのペダル配置だ。街中でちょんっとブレーキペダルを踏んで、そのままアクセルペダルをあおろうというのは、かなり難易度が高い。しっかりブレーキングしたとき、つまりブレーキペダルを踏み込んでいったときにはじめて、ふたつのペダルの高さが合うような、実にスポーティな設定なのだ。 ちょっと欲しくなったのは、「GRヤリス」などに採用されているiMT。シフトダウン時に自動でエンジンを吹かし回転数を合わせてくれる機能である。あれがあると、鬼に金棒かもしれない。 でも、GR86のように、自分の手と足をフルに使って速く走らせるという、究極のマニュアル感覚が楽しめるというのも悪くない。