もはや「同格ですらない」日本とシンガポール、物価高騰に見る「悲しき国力差」とは
ラーメン価格も日本の「2倍」
不動産・家賃の価格は、モノやサービスの価格に転嫁されるため、それらの価格も高くなるのが通常だ。 食品や飲料の価格を見ると、レストランでの食事は日本と比べると約2倍ほどの水準となる。安価なレストランで食事をすると、シンガポールでは約15シンガポールドル(約1,740円)、日本では約1,000円かかる。ミドルクラスのレストランでの2人分の食事代は、シンガポールで約95シンガポールドル(約1万1,020円)、日本では約5,000円だ。 日系レストランの進出が進むシンガポールでは、ラーメンを楽しむことができる店も多いが、トッピングなしのレギュラーメニューは1杯17~18シンガポールドル(約2,000円)ほどと、これもやはり2倍ほどの価格が相場となる。 一方、日用品の価格もシンガポールのほうが総じて高い。たとえば、牛乳1リットルの価格はシンガポールで約3.81シンガポールドル(約442円)、日本では約205円。パン500gはシンガポールで約2.53シンガポールドル(約294円)、日本で約205円だ。肉類や卵、チーズなどもシンガポールのほうが1.5~2倍ほど高い。 交通費に関しては、シンガポールの地下鉄・バス運賃は日本とほぼ同水準だ。片道の運賃はシンガポールで約2シンガポールドル(約232円)、日本で約220円。一方、ガソリン価格はシンガポールのほうが高く、1リットルあたり約2.84シンガポールドル(約330円)、日本は約164円だ。
シンガポールが物価高でも「日本と全然違う」ワケ
このように、シンガポールの家賃や物価は、日本に比べてかなり高い水準にあるが、経済成長やそれに伴う給与水準の上昇により、実質の負担はそれほど増えていない印象だ。 シンガポールの世帯収入(中央値)は、2023年に1万869シンガポールドル(約126万円)と前年比で2.8%増加した。厚生労働省の調査によると、日本の平均世帯収入は2021年に545万円だった。日本と比較すると、シンガポールの世帯収入は2倍以上となり、高い物価を許容できる水準にあることがわかる。 民間部門の給与上昇率は、おおむねインフレ率と連動しており、過去数年は毎年約4%の上昇を続けてきた。2024年は6%の給与上昇が見込まれているという。 このところシンガポールでも人材獲得競争が激化しており、需要が高い職種においては、さらに高い給与上昇が予想されている。人材紹介会社Morgan McKinleyの調査では、企業の人事担当者の80%がスタッフ獲得競争を「やや激しい」または「非常に激しい」と回答しており、人材獲得を巡る競争が賃上げ圧力につながっている。 職種別の年収を見ると、金融機関のマネージングディレクター(MD)クラスで50万~70万シンガポールドル(約5,800万~8,100万円)と高額だ。上級レベルのITエンジニアでも20万~30万シンガポールドル(約2,300万~3,500万円)の高給が提示されている。 シンガポールの高い給与水準は、優秀な人材の獲得・定着を企図した政府の外資誘致政策の表れでもある。今後もデジタル人材などの需給逼迫が続くと見られ、賃上げ圧力は根強く残りそうだ。