【毎日書評】自分の生き方をデザインする「お金」の使い方・減らし方
お金は価値を交換する物差し
ただし重要なのは、「お金はものの「価値」を仮に数字に置き換えたものであり、それを示す指標ではない」という点。お金が先にあったのではなく、それ以前から世の中にあるもの(物品や、作業の結果など)に、それぞれの「価値」があったのですから、その価値を認めなければ交換もなかったことになるわけです。 たとえば、美味しい芋が一つもらえるなら、庭の掃除を半日してやっても良い、という交換が成立する場合、芋一つと庭を掃除した結果に、同じだけの価値がある、という認識を、少なくとも交換をする両者が持たなければならないだろう。 もし、この「価値」が等しいことが成り立たない場合は、芋をもう一つ増やさないと、同じ作業がしてもらえなかったりする。それでも、物や仕事にある一定の「価値」がある、という点は同じだ。(42~42ページより) 当たり前の話ではあるものの、そこが肝心なのだと著者はいいます。たとえば、ある商品を買おうかどうしようかと悩んでいるとき、なにをどう比較するのか。そういった問題を向き合う際に、この認識が必要になるわけです。 5000円のバッグを買おうかどうするかと迷う場合であれば、普通はそのとき財布に入っている金額と、5000円という商品の価値を比較することになるでしょう。そのバッグをどのくらい欲しいかという気持ちとの比較もありますが、気持ちは数や量では測れないものでもあります。 もう少し金銭感覚を持った人なら、こう考えるだろう。「この五千円で、ほかに何ができるだろう?」と。その想像をするのは、だいぶ経験を持った冷静な人である。 バッグを買うと、五千円がなくなるのだから、その金額で買えるものが消えることと等しい。五千円あれば、美味しいものが食べられるかもしれない。数日後には払わなければならない期限のものがあったではないか。 払えなかったらどうなるだろう、と想像する。そうした想像をしたうえで、バッグを買うことを我慢する方が、それらを失うよりはましかもしれない、という結論を導き、購入をしない決断をする。こういった判断を日々しているのが、普通だと思われる。(40ページより) 重要なポイントは、ものの価値は“そのものの値段”ではないということ。値段はつけられているけれど、それは売りたい側が決めた数字。したがって買う側は、「それは買うに値するだろうか」という自分にとっての価値をそこに見出そうとするのです。(42ページより) 著者はときどき、「やらなければならないことが多すぎて、自分の好きなことが全然できません」という相談を受けるのだといいます。そしてその際には、「自分の好きなことをするために、やらなければならないことをしてみてはいかがでしょう」と答えるのだそう。たしかに考え方次第で、人生はいかなる方向にもシフトしていけるものなのかもしれません。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: SB新書
印南敦史