「謝罪で総理の職を手にした石破氏」と「絶対に謝らず失職した斎藤前兵庫県知事」を分けた命運ーー重要場面を左右する「謝罪」の肝
9月27日、自民党新総裁に選ばれたのは、これまでに4度、総裁選に挑戦して落選してきた石破茂氏でした。強力なライバルとの戦いを制した要因はさまざまあるようですが、筆者が注目したのは、石破氏の決選投票の最終演説。なんと「謝罪」から始まったのです。 【画像】石破氏のスピーチに「拍手してない」と批判された麻生太郎氏 ■「最後の挑戦」は謝罪から始まった 田中角栄の弟子筋にあたる政治家は多々いる中、石破茂氏といえば正論ばかり吐くので味方が少ないなど、国民からの人気とは裏腹に、党内での支持に弱みがあると言われていました。今回の総裁選挙は自身にとって「最後の挑戦」だと表明しています。
史上最多の候補が居並ぶ中、石破氏は前評判の高かった高市早苗氏に次いで2位となり、決選投票まで進むことができました。3位であれば、「最後の挑戦」は叶わず退場していたのです。その挑戦の肝となる最終演説は、異例の「謝罪」から始まりました。 私は至らぬものでありまして、議員生活38年になります。多くの足らざるところがあり、多くの方々の気持ちを傷つけたり、いろんな嫌な思いをされたりされた方が多かったかと思います。自らの至らぬ点を心からお詫びを申し上げます。とともに、この総裁選挙を通じまして、多くのことを学ばせていただきました(石破氏のスピーチより抜粋)
自分の実績や大物政治家との関係性といったアピールではなく、謝罪という自己否定から入るスピーチは特異です。しかし総裁選後の報道では、この最終演説が良かったという声が多数見られました。 「最後の戦い」の最終場面において、自らを否定し、謝罪するという形をとることによって、敵も味方も惹きつけることができたのではないでしょうか。 ■石破スピーチの肝はツンデレ? 麻生太郎内閣時代、大臣でありながら麻生氏を批判したり、第1次安倍晋三政権下では安倍氏に辞任を求めたりと、首相にすらぶつかる強硬さを持つ石破氏が、総裁選決選投票という最も注目を浴びる場で謝罪を述べたことは、大きな効果を得られたと思います。