徹底解説!トランプ政権下で「為替」はどう動くか
「140円を円高と呼びますか?」というのが私の問題提起なんです。これは130円になっても同じことを言うと思いますが、この円安自体は110円から始まっているわけで、110円から160円までいった円安をすべて日米金利差だけで説明するのはさすがに思考停止じゃないですかと思います。 なので、本来的には日本は今、外貨が取りにくくなっているという話を中心に、円相場のことを考えてあげたほうがいい。 ■日本はこの10年、円高を経験していない
――コロナ以前にあった100~110円に戻るというのはありえないという見方でしょうか。 日本が貿易赤字の状態では難しいと思います。日本は円高で苦しんできた時代が長いので、為替マーケットの経験が長ければ長いほど「円高=悪いこと・怖いこと」という印象が色濃いと思うんです。 でもこの10年、日本経済は円高を経験していないですよ。円高になって社会がヒステリックになって、日銀が金融緩和で救いの手を入れるようなことが日本の歴史上何度も繰り返されてきましたけれども、この10年は見てないですよね。
では10年前の2012~2013年ごろに何があったのか。そのころからアベノミクスが始まったので、その大規模金融緩和の余波で円高にならなくなったという考え方をする人たちもいます。 私はそうじゃないと思っています。統計を見れば、日本の貿易収支の黒字が趨勢的になくなったのがそのころです。だから、単に日本が外貨を稼げなくなったというタイミングで円高にならなくなったというだけの話だと私は思っていて、100円とか100円割れといった話は再び貿易黒字国に返り咲かないかぎりはないと思います。
動画内ではこのほかにも、「為替相場のサブシナリオ」「日本の金融・通貨政策への影響」「ユーロの動向」について聞いています。
野村 明弘 :東洋経済 解説部コラムニスト