徹底解説!トランプ政権下で「為替」はどう動くか
難しいところですけれども、基本的にトランプ氏の目指しているところは国際協調ではないです。アメリカがよければいい、と。 ただ、ヨーロッパもけっこうそういう雰囲気になってきているので、日米欧3極において、自分の国がよければいい、自分の国にいかに投資をしてもらうのかを戦略上いちばん大事な論点に置いているのは別に珍しいことではない。むしろ、そういう状況にもかかわらず自由貿易が大事なんだと言い続けるスタンスのほうがナイーブなんです。
トランプ氏が言うとエキセントリックな情報発信に見えますが、それと同じことをフランスやイギリス、ドイツが言う分にはあまり騒がない。それはオブラートに包んでいる言い方をしているからだと思います。 日本も対日直接投資を喚起する政策に力を入れ始めている。トランプ氏になってアゲンスト(逆風)には違いないですけれども、アゲンストなのは今のバイデン氏でも同じで、そこから変わらないと思ったほうがいいですね。 ――トランプ政権下においては160円を突破するような円安に動くイメージなのか、今のような150円前後あたりなのか、あるいは投機的な取引が増えている話もありましたので、急速な巻き戻しで140円くらいまで一時的には円高にいくのか、予想レンジを教えてください。
今言われた数字は全部ありえて、この1年で全部踏むと思います。そうすると予想のレンジとしては広すぎるという話になるんですけども、でも現実にそうなんだから仕方がないというのが私の思っているところです。 今、日本の貿易赤字は縮小傾向にあって、経常収支は拡大傾向にあるので実需の円売りはあまりないわけです。トランプ政権下では金利が上がっていくはず、高止まりするはずだということで、投機的な円売りがどんどん積み上がっている。ですので、160円にいくときにはおそらく投機主導だと思います。
一方、投機主導で積み上がった円売りが巻き戻されたときに何が起こったか? 8月初頭に一気に141円台まで動いて、日経平均が大きく下がったわけですよね。 だから、これから140~160円台ぐらいのレンジでの取り引きは全然あると思います。私は本(『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』)も出しているので、円安って言ったのに円高になったじゃないかとかって8月に言われてたんですけども、変動為替相場なので、そうなることは当然ある。