目に入った紫外線で「全身日焼け」するって本当? 紫外線による目への影響を医師が解説
目にさまざまな害を与えると言われる紫外線。外出するときにはサングラスをかけるなどして、目を保護している人もいると思います。一体、紫外線はどれくらい目に悪いのでしょうか? 【イラスト解説】紫外線も原因になる『白内障』のサイン《危険な見え方》 どのような健康被害が生じるのか、また、それを防ぐ対策などについて、坂西眼科医院院長、並びに順天堂大学医学部附属浦安病院講師を務める坂西先生に教えてもらいました。
紫外線は目にどのような影響があるのか?
編集部: 紫外線は目に悪いと聞いたのですが、本当ですか? 坂西先生: はい、紫外線にあたって皮膚が日焼けするのと同じように、目も紫外線によって日焼けのような状態になることがあります。 編集部: もう少し詳しく教えてください。 坂西先生: 紫外線によって目が受ける影響は、急性のものと慢性のものに分類されます。たとえば、冬にスキーをしたり、夏に海で遊んだりすると、いつもより大量の紫外線を浴びることになり、数時間後に目が充血したりゴロゴロと異物感を覚えたりすることがあります。 これらは急性の症状で、48時間くらい経つとおさまります。 編集部: 数時間後に症状が出るのですね。 坂西先生: だいたい日中に日焼けして、夜に症状が出ることが多いのが特徴です。そのまま自然と症状はおさまりますが、人によってはとても強い痛みが出て耐えられないということもあります。 しかし、夜間に開いている医療機関を見つけるのが難しいという問題もあるため、できるだけそうした症状が出ないよう、日焼け対策をしっかり行うことが必要です。 編集部: 目の日焼け対策は大事なのですね。 坂西先生: はい。そのほか、目から紫外線が入ると脳が「紫外線を浴びすぎた」と感じ、脳から「メラニン色素を作って肌を守りなさい」という指令が出されることで、全身の日焼けにつながるというリスクもあります。全身の日焼けを防ぐためにも、目の紫外線の対策は必要です。
紫外線の影響による慢性疾患
編集部: 慢性的な影響はどのような症状が見られるのですか? 坂西先生: 繰り返し紫外線を浴びたり、長時間強い紫外線にさらされたりすると、慢性的な障害が起こります。代表的な障害としては瞼裂斑(けんれつはん)、翼状片(よくじょうへん)、白内障、加齢黄斑変性などが挙げられます。 編集部: それぞれ具体的に教えてください。 坂西先生: 瞼裂斑とは、白目の上に茶色い斑点ができたり、隆起物が見られたりする状態のことをいいます。両目に見られることが多いのですが、自覚症状はほとんどありません。ただし炎症を起こし、充血や異物感を覚えることがあります。 編集部: 翼状片とはなんですか? 坂西先生: 翼状片とは白目の組織が異常に増殖して黒目の方へ伸びてくる疾患のことです。紫外線を浴びて瞼裂斑や翼状片が発症するとされています。 編集部: 翼状片はどのような症状が見られるのですか? 坂西先生: 異物感を覚えたり、見づらさが出てきたりします。治療をするには異常な組織を切除する必要があります。 編集部: 次に、白内障とはどのような疾患ですか? 坂西先生: 目の中でレンズの働きをしている水晶体が濁ることにより、見えにくくなる疾患です。 なぜ水晶体が濁るのかというと、加齢の影響がよく知られていますが、それ以外にも水晶体は紫外線を吸収することによってタンパク質が変性するためで、それにより濁りが生じて見えにくくなるのです。 白内障を放置することにより見えづらさが進行し、いずれ失明に近い状態になることもあるため、注意が必要です。 編集部: 加齢黄斑変性とはどのような疾患ですか? 坂西先生: 紫外線を多く浴びることにより、目のなかの最も大事な黄斑という部位に、本来は存在しない、悪い血管が生えてくることなどによって水が溜まり、ものの中心が見づらくなる病気です。病気が進行するとどんどん見えなくなり、やがて失明に至ることもあります。