「田舎暮らし」の断片(4完)──「地方で生活する」現実とそのディテール
今、政府が唱える「地方創生」と共に脚光を浴びているのが、いわゆる「田舎暮らし」というライフスタイルだ。内閣府が昨年夏に発表した調査結果によれば、農村や漁村に住みたいと考える都会人は31.6%で、前回調査時の9年前から11ポイント増えている。若者の方がその傾向が強く、20代では38.7%がそうした「田舎暮らし」に魅力を感じているという。 【写真】(3)「土地」というでっかい画用紙に夢を描く だが、実際に大勢の若い世代が「田舎暮らし」を実現しているかと言えば、今、40代でそれを経験している僕の実感からすればNOである。いわゆる「団塊の世代」の引退と共に、リタイア後の移住者が急増している実感はあるものの、統計上も地方の高齢化がスピードダウンする気配はない。 現役世代の場合、「夢はあっても金がない」「田舎に行っても生活の手段がない」といったところが現実だと思う。だとすれば、いまさら「夢のような田舎暮らし」を煽っても仕方がない。ここでは実体験を踏まえ、身の回りにある「田舎暮らし」のリアルな断片をいくつか紹介したい。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)
人工林は「自然更新」できない
この連載では、「森林・薪づくり」(第1回)、「夫婦の役割分担」(第2回)、「土地・家」(第3回)を主なテーマに「田舎暮らし」の一端を紹介してきた。最終回となる今回は、前3回で書き漏らしたことや僕自身の体験を交えながら、もう少しだけ「田舎暮らしの現実」のディテールに迫っていきたい。 僕は今、長野県・蓼科の標高1350メートルの別荘地に住んでいる。暑さ対策とは無縁だが、暖房の確保は死活問題だ。うちでは「薪ストーブ」をメインに使っており、第1回ではそれに関連して、この地域における薪の確保と森林保全の問題について書いた。 「木を切って薪にして燃やす」という行為は一見、環境破壊のようだが、一度人の手が入った人工林の場合は、ある程度育った段階で木を間引く「間伐」をしないと土砂崩れなどが起き、結果的に自然が荒廃してしまう。林野庁が発表しているデータ(平成24年)によると、日本の国土面積に対する森林の割合(森林率)は67%で、そのうちの41%が人工林だ。ちなみに、この連載の舞台になっている長野県は、「森林率79%・人工林率42%」となっている。ここで、第1回で紹介した森林保全活動をしているNPO法人「八ヶ岳森林文化の会」の南波一郎さんの言葉を再掲しよう。 「原生林は自然更新ができるけれど、一度人間の手が入った森はそれができない。人工林は間伐を前提に作られているのです」 今の日本では、人の生活圏内にある森林のほとんどは人工林だと考えて差し支えないだろう。それが戦後に大量植樹された針葉樹林であろうと、何十年かの間に自然発生的に育った広葉樹林であろうと、保全のためにはむしろ少しずつ間引いていかなければならない。しかし、こうした「現実」を知らずに「木は一本たりとも切ってはいけない」と主張する人が、僕が知る限り特に「移住民」や「別荘族」の側に結構いる。