中国よりも日本で好調な ラグジュアリーブランド 売上。正常化が進む業界の「強み」となるか
ラグジュアリーブランドは長年にわたり、世界第2位の経済大国である中国に成長を依存してきた。コンサルティングファームのベイン(Bain)は、中国本土は2030年までに世界のラグジュアリーアイテム購入額の24%から26%を占めると予想している。 しかし中国が経済的困難に直面するなか、もうひとつの市場である日本がラグジュアリー大国としての地位を固めつつある。
業績悪化の中でも日本では好調
4月下旬から5月中旬にかけて、世界トップクラスのラグジュアリー系コングロマリットのいくつかは、全体的な業績が悪化しているにもかかわらず日本では好調だったと報告している。ファッション業界最大手のコングロマリットであるLVMHは4月16日、ファッションおよびレザー製品部門のオーガニック売上が年初に鈍化したと発表した。 一方プレスリリースによると、日本では2024年度第1四半期に「2桁の収益成長」を記録したという。ただし日本を除くアジアにおけるLVMHの同四半期のオーガニック売上は前年同期比で6%減少した。 グッチ(Gucci)を所有するケリング(Kering)は最近、2024年度上半期の収益が最大45%減少する可能性があると発表し、投資家を不安にさせた。しかし同社が4月23日に決算発表をした際、日本での売上高は前年同期比で16%増加したことを明らかにした。これに対し、アジア太平洋地域全体の売上高は減少している。 カプリホールディングス(Capri Holdings)の買収が難航している大手ラグジュアリーコングロマリットのタペストリー(Tapestry)は5月初頭、日本での売上高は前年比で2%増加したが、中華圏での売上高は前年比で2%減少したと発表した。
円安により注目されている日本
昨年、中国がゼロコロナ政策による規制を解除すると、ラグジュアリーブランドは売上急増の恩恵を受けた。しかしここ数四半期は、インフレの進行や債務の増加、若者の失業率の上昇といった問題が同時に押し寄せているため、中国でラグジュアリーアイテムを購入する買い物客数は減少している。 世界銀行(World Bank)は12月、2024年の中国の成長率は2023年の5.2%から4.5%に落ち込むと予想した。 ラグジュアリーブランドのアパレル、シューズ、アクセサリーを求め、多くの買い物客は依然として中国に目を向けているが、日本はこの分野での牽引力を増している。理由のひとつは円安だ。ファッション業界紙のWWDが最近報じたように、現在日本円は対ドルで34年ぶりの安値を記録しており、これは中国本土と日本のラグジュアリーアイテムの価格差が過去約18カ月のあいだ最高水準に達していることを意味する。 総合情報サービス会社のブルームバーグ(Bloomberg)によると、これにより一部の中国人買い物客がラグジュアリーアイテムを購入するために日本に旅行するようになったという。また、日本には日本国内で特定の商品を購入すると免税される制度もある。コンサルティング会社のラグジュアリンサイト(Luxurynsight)によると、中国人買い物客が日本で商品を購入した場合、免税により最大25%節約できるという。 コンサルティング会社のジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)でシニアリサーチアナリストを務めるジェシカ・ラミレズ氏は、ラグジュアリーブランドは中国でさまざまな成功を収めている一方で、「日本は強みだ」と米モダンリテールに語った。日本は8年連続でマイナス金利を敷いたが、これは経済成長促進の一環でもあった。現在日本の成長はますます顕著になってきており、3月には17年ぶりに利上げを実施したほどだ。