「家族で焼き芋を作った思い出」より“節税ファースト” 空き家を手放す気になる「すごい特例」【50代女性記者体験記】
しかも築年数は50年。耐震基準を満たしていない。思い出よりも、節税ファーストでそろそろ手放すべきか、と考えるようになったのも「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」、いわゆる「空き家特例」の措置の適用期限を知ったからだ。この特例は、1981年以前に建てられた建物などに適用できる。特例を使うには、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却する必要がある。売却によって得た譲渡所得から最大で3000万円を控除できる。 適用期限は2027年12月31日までだが、空き家が社会問題となっているいま、この期限は延長されるという声もある。しかも「今後この空き家特例は、使い勝手が良いものに拡充される可能性がある」と前出の神谷さんも話す。これはしばらく使える特例だと信じたい。 ■600万円の節税 試算をしよう。例えば、8000万円で実家を売却した場合。あくまでも仮の算出だが、売却額である8000万円から手数料・取り壊し費用・測量費・取得費(不動産を購入したときの合計額―減価償却費。契約書がないため5%ルールで計算)などを引くと、7020万円。特別控除がなければ、この7020万円にかかる税金は1404万円になる(家の所有期間が10年超の長期譲渡所得になるため所得税15%と住民税5%を足した20%での計算)。 一方で「空き家特例」の3000万円の特別控除を使えば、7020万円から3000万円を引いた4020万円に課税されるので、税金は804万円。単純に考えて600万円の節税になる。税金が1千万円超えになるのとならないのでは、心理的な負担もかなり違う。 こういった特別控除は、空き家特例に限らず、使えるものは何でも使いたい。適用可能かどうか、そのための条件はクリアしているか。注意点も知っておきたい。受け身や人に任せっきりではなく自分で動いて知識をつけること。これが最も大切なことだと、相続の経験を通して学んだ。多くの人が体験して初めて知る。しかし、事前に知っておくことで、どれだけスムーズにいくか。記者の体験を通して伝えたい。 (AERA dot.編集部)