「家族で焼き芋を作った思い出」より“節税ファースト” 空き家を手放す気になる「すごい特例」【50代女性記者体験記】
年末年始は、両親や兄弟姉妹とゆっくり話せる絶好の機会。将来の相続について話すという人も多いのでは。「相続は経験してはじめて知ることがいっぱいあった」と語るのは、本誌の女性記者(50代)。最初は誰に何を頼めばいいのかまったくわからなかったと話す。いざというときに困らないために、相続体験記「損をしない相続」の後編。 一生お宝になるかも!?【大型の高配当株30銘柄】はこちら! 【前編】<「終わってみれば簡単でしょう」 税理士の言葉に安堵 「相続税の支払い」で勘違いしていたこと 【50代女性記者体験記】>より続く 相続税を計算するにあたって、使える制度をいかに活用して節税するか。そのためには腕利きの税理士を見つけたり、自分自身で学んだりすることが肝になる、ということは前編で書いた通り。「使えるものは何でも使え!」精神を忘れないでおきたい。 ■特例がなければ… 被相続人が亡くなり土地を相続する場合、「小規模宅地等の特例」は節税効果が大きい。相続や遺贈によって取得した土地のうち、故人やその家族が事業や居住用に使っていた宅地等は一定の面積まで相続税の評価額が減額される。最大で8割減になる。たとえば、5000万円の相続税評価額の自宅を持っている場合、最大の8割減なら1000万円の評価で相続税が算出されることになる。1000万円は、基礎控除額(3000万円+<600万円×法定相続人の数>)よりも低くなるので、他に資産がなければ、この場合は、相続税がかからない計算になる。 我が家の場合は母が存命で、父と生計を共に暮らしていた。施設暮らしではあったが要件を満たしていたため、この「小規模宅地等の特例」が適用できた。ただ評価額と預貯金を足した額が基礎控除額を超えていたため、相続税の支払い対象にはなった。この特例がなければかなりの課税額になったと思う。
もし母がすでに他界していて、父が家を残して亡くなっていたら原則としてこの「小規模宅地等の特例」は使えなかった。姉も私も持ち家があり、別の場所に住んでいるからだ。子どもに持ち家がある場合、この特例は適用外になる。 税理士で公認会計士の神谷有子さんは言う。 「相続人が賃貸に住んでいれば、『小規模宅地等の特例』の適用要件を満たしやすい。相続人に持ち家があれば親の家を使わない可能性が高いため、特例の適用が厳しくなります。私自身も税理士になる前に相続の経験をしましたが、事前にこの特例を知っていれば、自分の住まいを買わなかったかもしれません。それくらい魅力的な特例です」 ■「これを維持して大丈夫かな」 「空き家問題」も考えておきたい。娘2人(姉と私)は同居していないので、母が亡くなれば実家は空き家となる。庭には母の大好きな柿や梅の木があり、春に秋にと実をつけて私たち家族を和ませてくれた。紫陽花もキレイに咲いた。枯れ葉を集めて家族4人でたき火をし、アルミホイルに包んだサツマイモを入れて焼き芋を作った。おいしかったこと、楽しかったこと、幸せだったこと――。 そんな思い出の家を手放すのは「絶対に嫌」で、私はつい最近まで家を守り切ると周囲にも自分にも言い聞かせてきた。しかし相続税を支払った後に、またやってくる固定資産税。光熱費に火災保険料や修繕費など。これからかかる費用を考えると「これを維持して大丈夫かな」という気になってきた。