【本と名言365】デイヴィッド・ホックニー|「画家は長生き…」
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。世界から愛される画家、デイヴィッド・ホックニーは、常にポップでみずみずしさを失わない。齢80を超えてなお新しいスタイルに挑み、描き続けるホックニーの生活は、その絵画世界そのままに幸せに満ちている。 【フォトギャラリーを見る】 画家は長生きできる 1960年代ロサンゼルス。アクリル絵の具で描かれた陰影の薄い建物、室内、プール、そこから立ち上がる水しぶきの絵は時代が求めた軽さを見せ、ディヴィッド・ホックニーは世界に愛される画家になった。 以降、クロッキーのように素早い筆致が見えるポートレートや風景画、写真を並べたコラージュ、近年ではiPadを使ったドローイング、と手法を変えながらも常に明るく、抜けの良い世界観を描き続けている。 「私は、『描き続けなければならない、なぜなら常に変化しているからだ』というセザンヌの言葉が好きなんだ。まさにそのとおりだよ。なぜなら、われわれがそうだからだ。永遠の流れだね」 2019年からフランス・ノルマンディに新しくスタジオを構えた。周りの木々、池の水、雨、月、それらは一瞬たりとも同じではなく、ホックニーはそれらの瞬間瞬間を描き留めようとする。iPadを手にし没頭していると時間を忘れ、自分すら意識しなくなるという。 美術評論家マーティン・ゲイフォードはこの状態を、心理学者ミハイ・チクセントミハイのフロー理論に重ね、自意識が消え充足感に満たされる活動に打ち込んでいれば、発展と成長を続けることができる、それをホックニーが体現していると説く。 ストレスなき世界に生きるホックニーは御年86歳。 「毎日描くことは誰にでも向いているわけではないが、私には向いている。そうしていれば、今を生きていることになる。画家は長生きできる」
デイヴィッド・ホックニー
1937年イギリス生まれ。1964年からロサンゼルスに居を移し、「A Bigger Splash」(1967年)など明るい色彩のアクリル絵画で話題を呼ぶ。油彩、水彩、版画、写真やファクシミリ、iPadなど様々な素材と手法で作品を発表。現在はフランス、ノルマンディにアトリエを構える。
photo_Miyu Yasuda text_Chiharu Watabe illustration_Yoshifumi ...