マイナス金利なのに、なぜ住宅ローン金利が引き上げになるの?
変動型の住宅ローン金利はどうやって決まるの?
ちなみに変動型の住宅ローン金利の方は、短期プライムレートと呼ばれるものが基準となるのですが、これは短期の金利であり、日銀の金融政策に直接影響されるものとなっています。 それでは今後も黒田日銀総裁の発言にもあったように、金融機関がコスト転嫁のため住宅ローンの金利を引き上げることはないと言えるのでしょうか。いまのところコスト転嫁は考えづらいかもしれません。それでもマイナス金利の状態がこのまま続き、マイナス金利がさらに深掘りされるようなことになると、その懸念が強まることは確かです。 その兆候となりそうなことが生じています。信託銀大手各社は顧客の投資信託やファンドが運用する資産のうち、現金部分について新たな手数料を徴収すると報じられました(日経新聞)。
マイナス金利の個人への負担は、住宅ローン以外でも考えられる?
公社債投信に限らず株式投信でも、換金に備えてある程度の資金を短期金融市場で運用しています。年金などの運用も同様です。特定金銭信託と呼ばれる預金口座のその資金は通常、コール市場などで運用されます。ところが短期金融市場でのマイナス金利化により、それが日銀の当座預金に積み上がっていたのです。その分はマクロ加算という区分けとなり、日銀によるマイナス金利が適用されます。 そのため信託銀行は資産運用会社などにその分の手数料を課すことになったのです。これがもし個人に課す手数料に再転嫁されるとなれば、結果として投資信託などを保有している個人に対してマイナス金利分の手数料が課せられることになります。 このように個人にマイナス金利による負担を課す可能性は絶対ないとは言えません。これは住宅ローン金利だけでなく、預貯金金利も同様といえます。これはあくまで今後の金利の動向と、それに対応する金融機関の出方次第となるのです。 (金融アナリスト 久保田博幸)