アンモニアのコストは石炭の3倍、石炭火力発電の延命に使っても割に合わない
■グリーン・ブルーアンモニアはコスト高
そこで、アンモニアの原料として天然ガスや石炭のような化石燃料を使うのではなく、太陽光や風力や水力で作られた再生可能な電力を使って水を電気分解して水素を作り、その水素を使ってアンモニアを作ることが考えられている。これならアンモニア製造時にCO2は発生しない。 あるいは、今までどおり天然ガスや石炭などを原料として水素を作り、副生したCO2は地中に埋めてしまうCCSという方法もある。 再生可能な電力を使ったアンモニアを「グリーンアンモニア」、 CO2を地中に埋めた場合は「ブルーアンモニア」という。これに対して、化石燃料を使ったアンモニアを「グレーアンモニア」という。グリーンやブルーのアンモニアであれば、JERAがいうように「CO2の出ない火をつくる」と言ってもいいかもしれない。 ただし、このようなグリーンやブルーのアンモニアを作っている工場は現在のところ、世界中どこにもない。これから新たに工場を作るか、現在のアンモニア工場をグリーンかブルーに改造しなければならないのだ。 このため、建設コストと建設時間がかかるし、再生可能な電力を手当するか、CO2を地中に埋めるかするための費用もかかるから、かなり高価なアンモニアになってしまう。 図は、資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループで紹介された、グリーンおよびブルーのアンモニアのコストだ。 これによると、グリーンやブルーのアンモニアの製造コストは次第に低減していくが、それでも2050年時点で400ドル/トン程度である。 また、 2022年に取りまとめられた燃料アンモニア・サプライチェーン官民タスクフォースの中間とりまとめによると、ブルーアンモニアの場合、日本着コストで400ドル/トン程度になると試算されている。 ブルーアンモニアのコストを400ドル/トン、為替レートを150円/ドル、アンモニアの発熱量を22.5MJ/kgとして計算すると、発熱量1MJ(メガジュール)あたりのアンモニアコストは2.67円/MJとなる。 一方、石炭(一般炭)の日本着価格は2024年8月時点で23,000円/トンであるから、石炭の発熱量を26.1MJ/kgとして計算すると、コストは0.88円/MJとなる。つまり、発熱量当たりで比較すると、アンモニアのコストは石炭の約3倍という計算になる。 まだ、ワーキンググループの結論が出ていないが、アンモニア価格はかなり割高になることは確実であろう。 また、電力中央研究所はアンモニアと石炭を使って発電した場合の発電コストを試算しているが、これによれば石炭火力で8.7円/kWh、アンモニア発電では18.0円/kWhと発電コストでも2倍以上のコスト差となる。ちなみに天然ガス発電の場合は8.6円/kWhで石炭の場合とほとんど変わらない。 JERAは幾つかの企業とブルーあるいはグリーンアンモニアの購入について協議しているが、現在のところ供給契約まで進んだ例はない。契約がまとまらないのは、筆者の推測であるがアンモニアの価格面の問題も大きいのではないだろうか。 ※この続きはオルタナオンラインでお読み頂けます。 ■アンモニアの輸送は空気を運ぶようなもの ■グリーン・ブルーアンモニアは肥料向けが優先