波紋を呼んだ段ボールベッドをなぜ採用? 選手村に再設置された“背景”「問題になったのは理解している。だが――」【パリ五輪】
パリで100年ぶりに開かれるスポーツの祭典まで1か月を切り、徐々に開幕ムードが高まってきている。現地時間7月3日には、パリオリンピックとパラリンピックで使用される選手村がメディア向けに公開された。 【画像】エアコンなしの質素なデザイン? パリ五輪選手村の全容をチェック セーヌ川の河岸に建築された選手村は、82棟約7200室を配備。施設内には24時間営業のレストランなども立てられ、アスリートたちが大会期間中に心身ともに健康を保てるように工夫が凝らされている。 100%再生可能エネルギーで運営されるという選手村は、招致時から「史上最も環境にやさしい大会」を目指している大会組織委員会の想いが詰まったものとなっている。そうした中で、各国メディアから小さくない関心を寄せられたのが、各室に設置された「段ボールベッド」だ。 その名に聞き覚えがある人も少なくないだろう。21年の夏に開催された東京五輪で採用された段ボールベッドは、エアウィーヴ社が開発。軽量で組み立てやすく、リサイクル可能な素材を使用しているとして注目を集めた。 一方で軽量であるがゆえに選手たちの間では、「耐久性がない」と不満の声も噴出。200キロまでは耐えられると想定されていたものの、いざ選手やスタッフたちが入村すると、段ボールのフレームがゆがんだ写真がSNSで次々と公開。当時の米陸上男子長距離のポール・チェリモは「ベッドが潰れかねない。だから、床で寝る方法を練習しなければならない」と嘆くなど、違和感を口にしていた。 一部の選手団が破壊する動画をSNSで公開し、使用方法が波紋も呼んだ。そんな物議を醸した段ボールベッドをなぜパリ五輪で再び採用する運びとなったのか。 その疑問に切り込んだ米メディア『News Nation』は、「なぜパリでも段ボールベッドは使われるのか」と銘打った記事を掲載。その中で「東京オリンピック以降でこのベッドが大いに盛り上がっていることは承知している」という大会組織委員会のコメントを伝えている。 「問題になったことは我々も理解している。だが、今回のオリンピックとパラリンピック選手村に同じベッドを選んだのは、環境への影響を最小限に抑えるためだ。そして大会の短い期間中に使用されたすべての道具に再利用するという、より広範な目標にも結び付いている」 選手の健康管理はもちろん求められる。だが、大会を運営する側は、あくまで今回の目標である「史上最も環境にやさしい大会」を目指すべく、再利用が可能になる段ボールベッドを高く評価したようである。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]