TikTok で人気の「 ソーシャルファースト 」ブランドが実店舗に進出。D2Cブランドとは異なる成長戦略
オンラインでスタートしたアスレジャーブランドのハララ(Halara)は、TikTok上でのスタイルと手頃な価格でZ世代の多くの買い物客を魅了してきたが、今度は実世界に店舗をオープンし、オンラインでない買い物客の獲得にも自信を見せている。 ハララは5月、初のポップアップストアをニューヨーク市にオープンした。このとき、ハララのグローバルブランドプレジデントであるギャビー・ヒラタ氏は米モダンリテールのインタビューに対し、年末までに米国で少なくとも4つのポップアップストアをオープンする予定であり、これはその第1号店だと語っていた。ハララは2020年に香港を拠点とする起業家のジョイス・チャン氏が設立した。それからまだ4年しか経っていないが、シンガポールとニューヨーク市に本社を置くこのブランドはソーシャルメディアで大きな支持を集めており、「TikTokで見て購入した(TikTok Made Me Buy It)」現象のおかげで、TikTokだけで66万人以上のフォロワーを獲得している。 一方、中国を拠点とするオーナー企業のバイトダンス(ByteDance)はTikTokを売却しない限り、ハララの初期の成功を加速させたこのプラットフォームは米国で禁止されることになる。ハララにとって実店舗はファン層を拡大するチャンスだ。ハララがTikTokで有名だからか、比較的新参者であるからか、同ブランドを怪しく思う買い物客もいるが、ハララはそういった買い物客からの信頼を得たいと考えている。 ヒラタ氏は、「潜在的な顧客にハララを購入しない理由を尋ねると、『このソーシャルメディアブランドを信頼できるかどうかわからない。本当にまともなブランドなのか?』という声がよく聞かれる」と、同社が定期的に実施している顧客調査やフォーカスグループを引用しながら語った。
ソーシャルファーストブランドの躍進
ハララだけではない。TikTokで話題になったものの、現在はこの動画共有アプリを超えて信頼を得るために、実店舗での小売に目を向けているデジタルネイティブな小売業者はほかにもある。 たとえば、Z世代を中心とするファッションブランドのサイダー(Cider)は昨秋、米国初のポップアップストアをニューヨーク市にオープンした。一方、Z世代に人気のもうひとつのブランドであるエディクテッド(Edikted)は今年、大型ショッピングモールのモールオブアメリカ(Mall of America)に3店舗目をオープンした。 オンライン販売から実店舗への移行は確かに新しい話ではない。アイウェアブランドのワービーパーカー(Warby Parker)からウールスニーカーメーカーのオールバーズ(Allbirds)、マットレスブランドのキャスパー(Casper)、リセールプラットフォームのザ・リアルリアル(The RealReal)まで、D2Cブランドはいずれも、早期にオンライン販売で成功を収めたあと、近年は実店舗をオープンしている。しかし、広告代理店グループのピュブリシスグループ(Publicis Groupe)の最高商取引戦略責任者であるジェイソン・ゴールドバーグ氏によると、ハララのような小売業者は、ソーシャルメディアの枠を超えて拡大をめざす新世代のデジタルブランドの代表だという。 「この新しい一連の企業は、口コミで広まったD2Cというよりは、ソーシャルメディアを通じて初期のブランド認知度と需要を築き、その需要をある程度満たしたあと、実行可能なあらゆる戦術を通じて規模を拡大しようとしているソーシャルファーストのブランドだ」とゴールドバーグ氏は語った。 要するに、過去10年間のD2Cブームのなかで誕生し、多くがベンチャーキャピタルから得た豊富な資金を使い果たしてしまった消費者向けスタートアップとは異なるということだ。スポーツアパレルブランドのアウトドアボイス(Outdoor Voices)など、現在問題を抱えているD2C企業は収益性の向上に苦しんでいるが、ソーシャルファーストのブランドという新しい勢力にとって、これは最終的に災い転じて福となるかもしれない。 「市場が困難な時期に生まれて早期に財務規律を学ぶ必要があったほうが、好況時に設立されてあとで苦労して財務規律を身につけるよりも、景気循環の浮き沈みを切り抜けるのに有利な立場に立てる」とゴールドバーグ氏は述べた。