尾上松也、舞踊劇『おしどり』で武将と鳥の精との二役!仲睦まじい夫婦の情をみせる
■新作を作ることは歌舞伎の伝統でもあると思う
部長 松也さんは、新作歌舞伎にも積極的に取り組んでいらっしゃいますよね。昨年は新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』で石川五エ門役をされたり、好評だった新作歌舞伎『刀剣乱舞』では、主役のほかに初めて演出もされました。 松也 (『刀剣乱舞』は)初めてのことで難しさもありましたけれど、理想どおりの仲間が集まってくれましたので、僕のやりたいことはすぐに理解していただけましたし、支えにもなってくれました。自分の方向性ははっきりしていましたので、あとは共同演出の(尾上)菊之丞さんと一緒に、そこに向かって作り上げていくだけで。大変でしたけれど、楽しかったという気持ちのほうが大きかったです。 小僧 歌舞伎らしさと新しさが両方味わえて、すごく満足感の高い作品でした。最後の闘いの場面はひたすら美しくて思わず号泣しましたよ!! 松也 ありがとうございます。いわゆる古典歌舞伎っぽさを前面に押し出した形で作っていくことを念頭に置いていたので、そのあたりのブレはなかったと思います。物語も音楽もゼロのところから、自分の思い描いたものを形にしていきましたので、楽しかった反面、自分が作り上げる世界観を果たしてお客さまは喜んでくださるだろうか――というのは初日が開いてみないとわからないことで、とても不安でドキドキしました。ですが初日に満員のお客さまに入っていただいて、最後に盛大な拍手をいただいたときは、ものすごく感動しましたし、いろいろな思いがこみ上げてきました。自分がやろうとしていることは、そう間違ったものではなかったんだなと熱い気持ちになりましたね。 小僧 素晴らしい体験ですね。新作をやることで新しいお客様が増えているなと感じますか。 松也 新作歌舞伎『刀剣乱舞』のときは、歌舞伎のことはまったく知らなくても、『刀剣乱舞』を大好きな方がたくさん劇場に来てくださいましたので、多くの方に歌舞伎として刺さることを本当に願っていました。結果、「『刀剣乱舞』を観て、歌舞伎に興味がわいて、歌舞伎座に行きました」というような声もたくさんいただいて、とても嬉しかったです。 小僧 歌舞伎ファンにとっても新作歌舞伎はとても楽しみです。俳優さんが普段とは違うテンションでお芝居するのはとても新鮮ですよね。 松也 そうですね。新作に出演するとか、新作を作るというのは、決して歌舞伎の伝統に反しているわけではなくて、むしろ歌舞伎の伝統のひとつだと僕は思うんですね。それが何十年にもわたって上演されることで古典になっていく。新作を作る意味は、そういうところにあると思いますので、僕も後輩たちに残せるような新作を作りたいです。これはひとつの夢ですね。 また、歌舞伎がなぜ現代まで残っているかというと、その時代のニーズにこたえてきたからですし、では、なぜニーズにこたえられたかといえば、やはり歌舞伎という演劇には柔軟性があるからだと思うんです。その特性を生かして、新作を作っていくことは必要なことだと思っています。 部長 今年1月には「新春浅草歌舞伎」への出演も一区切りとなり、ここへきて、松也さんのステージがまた変わった感がありますが、ご本人的にはどうでしょう。 松也 「新春浅草歌舞伎」には、10年間、リーダー的な立場として出させていただきました。これまでは毎年、浅草歌舞伎に向けて「何をやろうかな」と考えて、実際、浅草ではそれが実現できたわけですけれど、これからは本興行でどれだけのお役を勤めさせていただけるかというのは自分次第になってきます。浅草で勉強させていただいたことを本興行で生かせるようにするのが自分の務めだと思っています。 浅草でさせていただいた演目は、浅草で終わってはいけないと思うんです。僕がそれを本興行でしっかり演じることで、「浅草で頑張れば、本興行につながるんだ」という後輩たちの指針にもなっていくと思いますし、浅草というのはそういう憧れの場であってほしいんですよね。ですので寂しさもありますけれど、一方で浅草に背中を押していただいているような気もしています。今まで以上に歌舞伎の古典演目もしっかり勉強していきたいですね。 小僧 松也さんの古典、もっともっと観たいので、期待して待っています~!