なぜプロ野球で野手の衝突事故が起きるのか
「今回のアクシデントは、西岡の事前の判断ミスが招いたものでしょう。バッターが大竹で、(ライトの)福留は守備位置を前にしていました。福留の守備力と、打球の勢いを考えると、後ろから前にくる外野手が優先する状況です。そのあたりを西岡が事前に準備していれば防げました。ただ、大歓声の中、選手は“絶対にアウトにするんだ”という本能に沿い、全力プレーを心がけます。しかも、時間的に周囲を見る余裕のない半フライの場合、ボールだけを見て走りますから、こういう事故はおこりかねなない。本来ならば、声でどちらかが捕球するかを判断しますが、東京ドームや甲子園では、大歓声で、ほとんど声は聞こえませんから」 三塁手だった掛布氏も、現役時代、三塁ベンチ前のファウルフライを追ってピッチャーの古沢憲司と激突した苦い経験を持つ。その時も歓声で「任せろ!」の声が聞こえず、ボールだけを見て追ったので、同時に追ってきたピッチャーの姿が見えなかったという。 「周囲を見ればいいのですが、打球によっては、そこに目を向けた瞬間、ボールが取れなくなるというタイミングもあるんです」 ■事故を防ぐためにはどうすればいいか プロ野球の世界では、衝突を避けるために約束後を作っている。右中間、左中間の打球に関しては、センターが優先するのか、それともレフト、ライトが優先するのか。守備力とも関連してくるので、これはチームによって違うが、内外野の間のフライに関しては、後ろから前進してくる側、つまり外野手が優先というルールだ。三塁の後方のフライに関しても回り込んできたショートもしくはレフトが優先的に捕球する。 西岡が、事前に福留の前目にいたポジションと、その高い守備能力を判断材料として頭に入れておけば、打球が飛んだ瞬間に、次のプレーを予測して、福留に任すという選択肢も出てきていたのだろう。実際、福留は余裕を持って打球に追いついていた。