自家用ジェットの「途方もない」CO2排出量、全体像が初めて判明、超富裕層の車代わり
自動車でも行ける距離のフライトがあった
分析されたフライトの多くが、車でも移動できるような短い距離だった。論文の著者らは、プライベートジェットの所有者が利便性や時間の節約のために航空機の方を選んでいる可能性があると考えている。 全フライトの半数近い47.4%が500キロ未満のフライトだった。また18.9%のフライトが200キロ未満で、送迎に伴う乗客のいないフライトも多く含まれていた。さらに、50キロ未満の極端に短いフライトも4.7%あった。
排出量のピークは大規模イベント開催時
2023年に米国アリゾナ州で開催されたスーパーボウル(米プロフットボールNFLの決勝戦)や、フランスのカンヌ映画祭、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)、そして2022年にカタールで開催されたFIFAワールドカップといった大規模イベントは、プライベート航空による排出量のピークと関連していた。 調査対象となったイベントの中で最も多くのプライベートフライトがあったのは2022年のFIFAワールドカップで、1846回のフライトで1万4700トンのCO2を排出していた。気候変動対策のための会議であるCOP28では、291回のフライトで3800トンのCO2が排出された。 また、スペインのイビサ島やフランスのニースなどを目的地とするフライトには、夏季にピークを迎え、週末に集中する傾向があることも明らかになった。これは、レジャー旅行にプライベート航空が利用されていることを示している。
プライベートフライトの回数は増えている
先述の通り、プライベートジェットからのCO2の総排出量は過去数年間で増えており、2019年から2023年までの間に46%増加した。フライトの回数もこの間に34%増えた。 スウェーデン、リンネ大学の地理学者で論文著者のステファン・ゲスリンク氏は、この増加の一部は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)と関連している可能性があると述べている。 パンデミックの初期には商用航空が利用できなかったため、プライベート航空を利用できる人々はこれを代替手段とした可能性が高い。 ドレイ氏はまた、おそらく感染対策のため、近年は商用航空のビジネスクラスやファーストクラスではなくプライベートジェットを利用する傾向が見られると指摘する。 さらにゲスリンク氏は、パンデミックが超富裕層をますます裕福にしたと指摘する。氏は、少数の富裕層にさらに多くの資金が集中した結果、プライベート航空の利用のしやすさと関心が高まった可能性があると考えている。 今回はパンデミックによる後押しもあったが、基本的に、プライベート航空の成長は今後数十年にわたって続くと予測されている。