米利上げで始まった金融動乱:米欧アジア市場の「弱い鎖」はどこにあるか
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リーマン・ショック後に「ヘリコプター・マネー」を実践したベン・バーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長へのノーベル経済学賞授与は、ブラックユーモアなのだろうか。コロナ対策でばらまいた巨額のマネーが解いてしまった「グレート・インフレーション」の封印。物価の高騰を抑えるには金利を上げ続けるほかない。米連邦準備理事会(FRB)が音頭を取った金融引き締めに日本を除く主要国が息せき切ってついて行く。だんだん高まる湯船の温度に音を上げるマーケットも現れて、金融動乱の幕が開こうとしている。 最初に金融危機が爆発したのは、新興国ではなく先進国、それも英国だった。9月23日に リズ・トラス政権 が大型減税を発表したのを機に、株式、債券、英ポンドのトリプル安が英国を襲った。10%に達する高インフレの下で450億ポンド、円換算で7兆円もの減税を打ち出し、しかも財源の手当ても覚束ない。「トラス狸の皮算用」に市場参加者は怯えたのだ。 9月26日にポンドはドルに対して1ポンド=1.03ドルまで急落、1973年の変動相場制移行後の最安値を更新した。英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は「インフレ率を2%の目標に戻すためには、必要に応じて金利変更をためらわない」とのポンド防衛策を発表した。9月27日には国際通貨基金(IMF)は、大型減税の再検討を英政府に要請した。
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滝田洋一