池畑慎之介「72歳ひとり暮らし。終活にとらわれず、新たに2ヵ所の家を手に入れて。《やりたいこと》リストが常にいっぱいだから、寂しさを感じる暇はない」
50年以上ひとり暮らしを続ける、おひとり様のベテラン・池畑慎之介さんは、自宅の居心地のよさをなにより大事にしているそうです。賃貸物件を転々としていた時期もありましたが、今は老後を見据え、工夫を凝らした一軒家を建て、自由なひとり暮らしを楽しんでいます(構成=内山靖子 撮影=鍋島徳恭) 【写真】池畑さんの自宅屋上からの眺望は絶景 * * * * * * * ◆キッチンが広くなりほしいものを揃えて 私はひとり暮らしのベテランですから(笑)、やりたいことが常に山積みです。10年ほど前から「やりたいことリスト」を書くノートを作り、自分が挑戦したいと思ったことはすべて書き留めるようにしています。 「豚汁を作りたい」「車の床に落ちているパンくずを掃除したい」などの小さなことから、「居間の壁紙を張り替えたい」「海辺の平屋に住みたい」といった大きなことまで。実行できた項目はどんどん消していくので達成感があります。 ただ、消したそばからまた新たな目標を思いつくので、ノートには常に30項目以上の「やりたいこと」が残されている。それだけあると、人は後ろ向きにならないんですよ。次はこれをやろう、あれをやろう、と忙しくて、「寂しい」と感じているヒマもありません。 近頃は、ひとり暮らしになって時間ができると断捨離や終活を始める方も多いですけど、やみくもにモノを減らすのはどうなんでしょう。 もちろん、今の自分にとって不要なモノを処分するのは賛成です。私も数年前に、父から相続した高輪のマンションを筆頭に、ハワイの別荘や福岡県の糸島にあったマンションをすべて手放しました。 50代までだったら、飛行機に飛び乗って、あちこちの家を渡り歩くのも楽しかったけれど、この年齢になったら、もう少し落ち着いた暮らしがしたいですからね。
一時期夢中になって80体以上も集めた、女の子のファッションドールもすべて売り、若い頃にオーダーして作ったケリーやバーキンなどバッグの数々も、70代の私が持つには重すぎるので、本当に好きなものだけ残して手放しました。 でも、それは単に興味がなくなっただけ。もともと飽き性なんですよ(笑)。その証拠に、必要なものは今でもどんどん買っています。佐島の家は以前よりキッチンが広くなったので、ジュースを作るためのミキサーや糖質をカットできるというロカボ炊飯器など、ほしいものを次々と揃えました。 さらに先日、熱海にマンションも買ったんです。長年、一緒に卓を囲んでいる麻雀仲間の女性たちと、「みんなで温泉に行きたいわね」ってしょっちゅう言い合っていたのがきっかけ。だったら温泉つきのマンションを買い、みんなが泊まりこみで麻雀できるように改装しようと思い立ちました。 糸島も、別荘を手放した翌年に観光大使に任命されたので、地元でゴルフ場を経営している知人の土地に大型のトレーラーハウスを置かせてもらって。昔から「トレーラーハウス暮らし」が夢だったんです。 結局、新たに2ヵ所、家が増えましたけど(笑)、これからまだ10年、20年と生きていくわけでしょう。「終活」という言葉にとらわれず、今の自分にとって必要なものは手に入れていったほうが、人生がはるかに楽しくなると思うのです。
【関連記事】
- 【前編】池畑慎之介「72歳ひとり暮らし、海の見える秋谷の家を手放して、エレベーター付きの安全な終の住処を建設。新居では、ご近所さんと親しい仲に」
- 久田恵「70歳で移住した那須の高齢者住宅で手にした〈理想のすまい〉。6年後、終の住処にもなりえた家を引き払い、東京のひとり暮らしに戻った理由」
- 齋藤なずな「78歳漫画家、多摩ニュータウンに暮らして40年。すっかり高齢者だらけになった団地の、実体験を元に描いた漫画『ぼっち死の館』で話題に」
- おひとり様女性3人、健康や孤独、老後資金を語り合う「『助けて』を言える関係を作る。不安があっても<楽しく下っていく人生>を目指して」
- 未婚、死別、離婚…おひとり様の女性3人が将来を語り合う「健康・お金・孤独が不安。自分の老いへのリアルな備えを」稲垣えみ子×吉永みち子×小谷みどり