10年前に妹を殺害された男性が講師「今も形容しがたい喪失感」…犯罪被害者支援ボランティア養成講座
くまもと被害者支援センター、公安委員会指定20年目
犯罪に巻き込まれた被害者やその家族を支援する公益社団法人「くまもと被害者支援センター」は、熊本県公安委員会から「犯罪被害者等早期援助団体」に指定されて20年目となった。現在は30人以上の支援員が被害者やその家族に寄り添い、病院や警察署、行政窓口に同行するなどの支援を行っている。 【写真】「もう一度我が子に会いたい」福岡3女性殺害被害者の父親が心の叫び…警察署員120人に思い語る
「事件から時間がたった今も、形容しがたい喪失感がある」。被害者支援ボランティアを養成する講座で9月末、講師の男性は今も苦しい胸の内を明かした。
男性は約10年前に妹を殺害された。殺人罪などで起訴された男は妹に好意を抱き、自殺願望があったとして「好きな女性がいなくなればこの世に絶望して死ねると考えた」などと述べた。懲役18年の判決確定後、刑務所内で自殺した。
事件当時、男性は報道各社の取材から逃れながら深夜自宅に戻ったという。「妹の持ち物を一緒に天国におくってあげたかった。なぜ人目をはばからなければいけないのかと悔しかった」と振り返る。時間の経過とともに事件が忘れられていくことを無念に感じ、犯罪防止につなげたいとの願いから講師を務めるようになり、時には受刑者にも思いを語る。
センターの担当者は、「被害を受けたらケアが必要。一人で抱え込まず、とにかく相談してほしい」と話した。
養成講座は全6回で、9月4日~10月24日にあった。1回当たり3~5時間で、今年は学生や医療関係者ら16人が受講した。殺人事件の捜査や被害者支援にあたる県警職員、弁護士、産婦人科医らの講義を聴き、支援に関する法律や制度、心構えを学んだ。
熊本地検では、子どもが被害者になったときに検察、警察、児童相談所が連携して事情を聴く「司法面接」で使う設備を見学。受講者は修了後、ボランティアとしてパネル展示などの広報活動に携われる。より専門的な研修を受けることもできる。
センターは2015年、県の委託で性暴力被害者のサポートに特化した「ゆあさいどくまもと」を開設した。被害者の心理的、法的支援などを総合的に行っている。