【解説】経団連・夫婦同姓強要はリスク 国連の差別委員会も勧告
経団連が「選択的夫婦別姓」の導入実現に向けて、ねじをまいている。十倉会長は10日の会見で政府に向け、次のように促した。「議論しなくて今日まで来ている」「ほったらかしておくということではなくて、ぜひ、国会で議論を一刻も早く始めてほしい」。経団連がこの問題の解決を急ぐ理由を探ると、個人の問題にとどまらない「危機」が見えてきた。(日本テレビ 解説委員・安藤佐和子)
【夫婦に同姓を強いる民法第750条 経団連が改正を提言】
10日、経団連は「選択的夫婦別姓」に向けた法改正を政府に求める提言を発表した。9割の企業は、結婚後も旧姓を「通称」として使用することを認めているという。しかし、通称が使えても問題は多く、経団連は「同姓の強制は女性の活躍を妨げている」と指摘している。95%のカップルが婚姻時に男性の方の姓を選んでいるため、「姓の変更の負担が女性に偏っている」と指摘する。
【結婚で名字が変わると、どのような弊害が?】
経団連は「アイデンティティの喪失」という言葉を使っている。大袈裟に言って、耳目を集めようとしているわけではない。 以下のような実害が生じている。 ・結婚前の仕事の実績やキャリアが分断される。旧姓の時の論文や特許などが、自分のものだと証明するのに手間を要する。 ・海外出張で「パスポートの姓」と、「ビジネス上での通称」が違うことで、空港でのトラブルの他、現地スタッフが通称で予約したホテルの宿泊を断られたり、施設への入館を止められたりする等の問題が発生 ・社員の税や社会保障などの手続きで、戸籍上の姓との照合作業が必要となる さらに、 ・不動産や会社の登記は、通称のみでの記載は認められていない 会社の役員の登記は、2015年からようやく「旧姓の併記」も可能となったが、あくまでも戸籍上の名前の横に括弧書きでだ。(不動産登記で旧姓併記は今年から) 調査では、「旧姓であるがゆえのひと手間を求められると、ひと手間で解決はしても、それが何度も積み重なるということで少しずつ自分が傷ついていく」という声も上がった。