【解説】経団連・夫婦同姓強要はリスク 国連の差別委員会も勧告
【なぜ経団連がそこまで“選択的夫婦別姓”を「1丁目一番地」とするのか?】
「この問題は、以前は当事者個人の問題だということで片付けられがちだったが、企業にとっても、これはもうビジネス上のリスクだということで無視できないと」(経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長・正木義久氏) 「女性活躍が進めば進むほど、通称使用による弊害が顕在化している」という。役員などを務めている女性たちを対象に行ったアンケートでも、88%の女性が旧姓を通称として使用することに「不都合、不利益、不便が生じている」と回答。
多様な人材が活躍できるような職場環境にすることが、企業の成長を押し上げるために重要だということは、今やリーディングカンパニーでは共通認識だ。経団連は夫婦同姓の強制は、旧姓利用などの各社の取り組みだけでは解決できない、女性活躍を阻害する社会制度だと断定する。 利益拡大だけを目指すだけでは日本企業の生き残りはなく、企業を率いる経団連は「社会的視座」に立つことをモットーとしている。 これはきれいごとではない。 働き手不足が日本経済にマイナスの影響を及ぼしている中で、女性にとっても働きやすい、活躍しやすい環境づくりを急がなければならない。また、海外から人材を呼び込む必要もある中で、女性が負担を強いられたまま放置されているような国は、外国人からも選ばれなくなるだろう。 経済界にはこうした危機感がある。 日本はこれまで3度にわたり、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)から、“結婚に際して旧姓を維持することを選択できるようにするための法律”を採択するよう勧告されている。日本は今年の秋、そのために何を行ったのか報告することになっている。 ジェンダーギャップ指数で世界146か国中125位の日本。男女格差を改善しようにも、国や企業でものごとを決める「決定権」を持つのが、大多数「男性」で占められている中、女性が不利な立場に置かれている状況は、長年大きく変わらずに来た。 しかし、経団連が旗を振った。 経済同友会も新経連も選択的夫婦別姓の実現を要望している。 「女性の権利のために」だけではなく、「日本全体の利益のために」、今が考える、動く、タイミングではないだろうか。