食べることは生きること――EXILE TAKAHIROの生命力の源、故郷・長崎の祖父母や母、妻の味 #食の現在地
僕の口の中はずっと長崎のまま
味覚を楽しむ以上に、TAKAHIROにとっての食事は重要な意味があるようだ。「忘れられない食にまつわる思い出は?」と聞くと、二つの“おふくろの味”について語ってくれた。一つ目の“おふくろの味”は、自らの成長を感じさせる“母の味”だ。 「先日、僕の地元・佐世保で、子どもたちと書道作品を作る仕事がありまして。良いタイミングなので久々に実家に帰り、母の手料理を食べたんです。その味はまさに“おふくろの味”、おいしいなと思いました。一方で懐かしさを覚えて、少しショックでした。ああ、これが親離れなんだと、少し寂しい気持ちになりました。今の自分にとっては、妻のみそ汁の味が落ち着きますからね」 そしてもう一つの“おふくろの味”は、自分の人生の基盤になった“祖母の味”だ。 「両親は共働きのうえ夜遅くまで帰ってこなかったため、学校から帰れば祖父母が親代わり。家で食べるご飯は祖母がほぼ作ってくれました。祖母は運転手さんが寄って食べられるような、比較的大きな道路沿いにある飲食店で勤めていたこともあり、料理が上手。なかでも長崎ちゃんぽんは、正直どの店よりもおいしい。僕もいろいろ試してみましたが、あの味は超えられませんね。全国、どの家庭も共通かな? おばあちゃんって5分か10分に一度は『おなか減っとらんね?』って聞いてきませんか? その、『おなか減っとらんね? 食べんね』の一言があると、『さっき食ったわ!』と思いつつ嬉しくなる。物心がついてから東京に出るまで、嬉しい時も、悔しい時も、いつもおなかを満たしてくれた。僕にとって、祖母の味が“おふくろの味”なんです」
食べることの嬉しさを祖母の料理は与えてくれた。また、祖父の趣味も彼に大きな影響を与えた。 「祖父が肉大好きだったこともあり、肉も絶えずある生活。たぶん僕の肉好きは、祖父の影響から来ているんでしょうね。そう考えると、祖父母からの影響が僕の下地になっているのかもしれない」 故郷から離れて20年。祖父母の味、母の味、地元の味……住む場所も生活の形も変わっても、長崎の味は今なお人生に大きく息づいている。しかも、この地元・長崎の味は現在も自らの食卓を彩っている。 「妻が無類のカステラ好きで、家にあるのは、もちろん長崎のカステラです。地元の『肉のあいかわ』というお肉屋さんの長崎牛が定期的におふくろから送られてくるので、冷蔵庫に常に入っています。長崎には皿うどんに酢をかける文化があるのですが、その生活が根づきすぎて、ラーメンにお酢をかけて食べる習慣も当たり前。僕の家のところだけ住所が長崎なんじゃないかな(笑)。そう思うぐらい家から一度も長崎の味は消えたことがありませんし、僕の口の中はずっと長崎のまま」