日本ブラジル経済関係深化に期待高まる=EPA締結の加速なるか? 8年ぶり首相来伯が後押しに=ブラジル日本商工会議所の小寺勇輝会頭に聞く
ここ20年間のブラジルとの貿易関係で大きく躍進したのが中国だ。2000年の時にブラジルにとって輸出も輸入も12位だったのが、22年には両方とも1位になっている。2018年以降では日本企業からのブラジルへの直接投資額は、2020年にピークを迎えた約20億ドルから2022年は約7・5億ドルへと大幅に低下している。 なぜブラジルと日本の経済関係が弱体化し始めているのか。原因の一つとして挙げられるのは、自由貿易協定(EPA)の未締結が影響していることだ。一方で、現在はメルコスールとのFTA締結に向けてEUや韓国が交渉を始めている。 EUがブラジルに輸出しているものでは、日本と輸出金額ベースで8割強、輸出品は完成車や部品などの自動車関係が特に多く、品目ベースだと98%が重なっている。EU間とのFTAが締結されると日本からの輸出が高くなり、貿易に影響を及ぼすことになる。また、韓国による技術提供が日本の多くの技術と競争し、劣勢に立つことになる。
「ASEANも大事だが、メルコスールも十分に大きい」
日本は金額ベースで貿易国の約8割とEPAやFTAを結んでおり、世界的に見てもメルコスールとアフリカとの協定が残されている状況にある。日本とメルコスールの自由貿易協定が未締結なのは、日本にとって大きな損失になる。 なぜこれまで日本とメルコスール間の自由貿易協定に進展がなかったのか。「一番大きい理由と言われているのが、ブラジルの農畜産物は安くて競争力があり、日本の農畜産業界に影響を与えるのではないか」という懸念点だという。小寺氏は「今、特に気にしているものが牛肉だと言われているが、ブラジル産牛肉が競争するのはオーストラリア産のオージー・ビーフやアメリカ産USビーフであり、日本の和牛と異なることから競争しあうものではないことを説明する必要がある」と話す。 メルコスール側は日本の工業製品が入ることにより、地元製造業が困るというような見方があるが、小寺氏は競争するものは少なく「抵抗感が強いのはどちらかというと日本。したがって日本の経済界が日本政府に働きかけを行っている」と語った。