日本ブラジル経済関係深化に期待高まる=EPA締結の加速なるか? 8年ぶり首相来伯が後押しに=ブラジル日本商工会議所の小寺勇輝会頭に聞く
日本とメルコスールでは、貿易や投資を促進するためのEPA(経済連携協定)締結に向けた動きを2003年から経済界が中心になって始めていたが、首脳レベルでの動きは長年なかった。それが、今年1月に日伯電話首脳会議中にブラジル大統領のルーラ氏から岸田文雄総理大臣に対して通商協定の可能性を協議することが提言され、初めて正式な日本とブラジルの首脳会談の中で取り上げられたと報じられており、それが今回の岸田首相の来伯で大きな弾みをえることが期待されている。ブラジル日本商工会議所会頭を務める小寺勇輝氏(ブラジル三井物産社長)に、日伯間の経済関係強化とEPA締結における期待を聞いた。
国家プロジェクトの歴史と日系社会の重み
日本とブラジルの間では50~70年代初めにかけて様々な国家プロジェクトが実行された。ブラジルの造船業を支えたイシブラス、製鉄所のウジミナスやツバロン製鉄所(日伯伊三国合弁)、アルミニウム製錬のアルブラス、パルプ製造のセニブラ、セラード農業開発事業など大規模な投資が日本から行われていた。 小寺氏は日本とブラジルの関係で一番土台になっているのが「日系社会」だと話す。世界最大規模を誇る約270万人いるブラジルの日系社会の存在は大きい。「我々、日本から進出している企業にとって、日本に対するブラジル人のイメージがすごく良く、信頼を置いてくれていることが仕事のしやすい環境を作ってくれている」のビジネスにおける日系社会の存在の重要性を語った。 日系社会の存在はブラジルにとどまらず、南米の様々な国に根を張っている。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイからなる南米4カ国(準加盟国はチリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナム)で構成されている関税同盟「メルコスール」の多くで日系社会は存在感を見せている。
貿易協定の有無が経済関係に影響を与える
日本貿易振興機構(JETRO)によると、2021年に日本からメルコスール加盟国に進出している企業数は1021社。同報告書の中では、953社が進出しているカナダや960社のイギリスの他国と比較されているが「1千社以上の進出はすごい数」だと小寺氏は強調する。 一方で、日伯間の貿易関係を見ると、日本のプレゼンスが低下してきていることが分かる。2000年と22年を比較したデータによると、日本からブラジルへの輸出が24位から25位へあまり変化は見られないが、輸入が25位から17位に上昇している。逆にブラジルから日本との貿易を見ると、輸出先として5位だったのが9位、輸入国4位から10位に両方の順位が下落している。この20年間で日本とブラジルの通商・貿易関係は弱まったことが分かる。