「ウォール街で最も憎まれる男」、トランプが商務長官に指名したハワード・ルトニックとは何者か
利益相反への懸念
これは従業員を欺き、ルトニックを富ませるための計画の一環だったとされる。「彼は自分が支払いたいときにだけ支払う」と別の元同僚は言う。ルトニックの会社はこの訴訟の却下を裁判所に求めており、ルトニック自身は広報担当者を通じて、この記事に関するインタビューを拒否した。 元従業員の1人は、「私はその様子を直接目撃した。ルトニックによるいじめも、攻撃的な態度も目の当たりにした」と語るが、彼の戦闘的な性格は、トランプが商務長官に求める資質に合致しているのかもしれない。ルトニックは、2021年初めにビジネス界の多くの人々がトランプから離れる中で、トランプに忠誠心を示した人物の1人だった。 トランプはその頃、自身のSNSである「トゥルース・ソーシャル」の立ち上げを思い立ったが、その母体となったトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)を特別目的買収会社(SPAC)のスキームを用いて上場させる計画に助言を行ったのがルトニックだった。 ■利益相反への懸念 金融業界で約40年の経験を持つルトニックは、ウォール街のあらゆるトレンドを利用する方法に長けている。トランプと彼は、長年の付き合いで、1980年代のニューヨークで、それぞれの初期の富を築いたという共通点がある。彼らは似たような動機で動いており、次々と新しい金儲けの手法に飛びつき、時には詐欺やマネーロンダリングに関連する疑惑で当局の目を引くこともあった。 ルトニックは、トランプがホストを務めたリアリティー番組のアプレンティスにゲストとして出演したこともあるが、2人の間には1つ大きな違いがある。トランプは、細かなディールを避けがちだが、ルトニックは逆に細部にこだわり、株式や債券、スワップ取引、先物、デリバティブ、暗号資産、SPACなどのウォール街のあらゆる隅々を探求し、ほぼすべての分野から利益を生み出し続けてきた。 キャンターフィッツジェラルドは、さまざまな連邦機関とやり取りをしており、ルトニックの商務長官への起用は、利益相反への懸念を高めている。しかし、トランプ陣営が商品先物取引委員会のような機関のメンバーを選ぶ際に、ルトニックはおそらく、監視団体の苦情をあまり気にせず、突き進むと予測できる。 「彼は自分のことしか考えていない」とある元従業員は言う。「トランプは個人的な利益のために大統領になったが、ルトニックも同じようにビジネスを運営している。彼らはそっくりだ」と彼は指摘した。 ■幼少期で発揮した金儲けの才能 大学教授の次男としてロングアイランドで育ったルトニックは、幼少の頃から金儲けの才能を発揮した。子どもの頃の彼は、新しい野球カードを古いカードと混ぜて再包装したパックを友だちに売っていた。その中には5枚の新しいカードが入っている当たりのパックもあったが、当たりが1枚しかない外れのパックもあった。他の子供たちはその驚きを楽しんでいたが、ルトニックは、古いカードのパックを新しいカードの3倍の価格で売ることができることを知っていた。 その後の彼は、16歳のときに母親を亡くし、18歳のときに父親を亡くすという苦難にも直面したが、ペンシルベニア州のハバフォード大学で経済学の学位を取得後に、キャンターフィッツジェラルドに入社し、優れた取引実績で昇進を重ね、1991年に29歳で社長兼CEOに就任した。