クオリティメディアコンソーシアム、なりすまし投資詐欺などに対するJAAの緊急提言に賛同
デジタル広告の市場拡大に伴い、有名人になりすました投資詐欺広告などデジタル広告の不正や品質に関する課題が深刻化するなか、国内の有力広告主企業やメディアによる課題解決に向けた動きが加速している。 日本アドバタイザーズ協会(JAA)は5月17日、「社会問題化するデジタルメディア上の詐欺広告に対する緊急提言」を発表。これを受け、6月6日には、新聞社・出版社・テレビ局など国内の有力メディア30社と共同運営される「クオリティメディアコンソーシアム」は、この提言に賛同する声明を発表した。 JAAは今回の緊急提言で、デジタル広告ビジネスのエコシステムを形成しているとするプラットフォーマー、テクノロジーパートナー、メディア、アドバタイザー、エージェンシーおよびパートナー企業それぞれに対し対処すべき施策をあげている。 具体的には、①プラットフォーマーは、自社サイトのコンテンツと広告の品質管理を徹底し、違法・不適切なコンテンツを速やかに削除・非表示にする責任がある②テクノロジーパートナーやメディアは、広告費を無駄に消費するメディアや品質に問題のあるコンテンツを排除することに注力すべきである③アドバタイザーは、自社広告が適切なメディアに掲載されるよう最大限の注意を払い、法令違反のサイトや偽情報サイトへの広告出稿を避ける必要がある④エージェンシーやパートナー企業は、アドバタイザーの広告が意図しない場所に掲載されないよう、適切なサービスを提供することが求められる、としている。 さらに、アドバタイザーに対しては、「広告の行き先に責任を持ち、社会的に不適切な動きに繋がらないように広告活動を行う必要がある。問題が発生した場合は迅速に対応することが重要だ。生活者との健全な関係を追求し続けるため、業界全体での協力と倫理観を持った行動が必要である」と強調した。 この提言への賛同を表明したクオリティメディアコンソーシアムは、「昨今のなりすまし詐欺広告の社会問題化については、デジタル広告の社会的役割をあらためて問うべき状況で対策が急務だ。広告は広告主が消費者に有益な情報を伝える手段であるとともに、優良コンテンツメディアを広告費で支え、エコシステムを健全に発展させる役割がある」との考えを示すとともに、「提言の実現に向けて、広告取引先、関係団体、関係省庁と共に一層努めていく」とした。 JAAは2016年にデジタルメディア委員会を設立して以降、アドフラウドやブランドセーフティ、ビューアビリティなどデジタル広告の取引における品質課題の解決に取り組んでいる。2019年に「デジタル広告の課題に対するアドバタイザー宣言 ‐生活者のよりよいデジタル 体験と、健全な業界発展のために-」を発表したほか、2021年には日本広告業協会(JAAA)、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)とともに、デジタル広告に関する第3者認証機関であるデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)を設立するなど、デジタル広告の健全化に向けた業界全体での取り組みの必要性を訴えている。 また、クオリティメディアコンソーシアムは、品質と信頼性の高いコンテンツの発信と広告の提供をめざし、2023年10月にその活動指針となる「クオリティメディア宣言」を発表。加盟メディア企業30社とともに、デジタル広告が抱える課題解決に向け、広告主が広告掲載メディアを指名して掲載できるアドネットワーク(PMP、プライベートマーケットプレイス)の構築に取り組んでいる。
戸田美子