多忙な人が「TO DOリスト」を作ると、ますます追い詰められてしまう理由
現代に生きる私たちは、著しい社会の変容やIT技術の進歩により、より忙しい毎日を過ごすことになりました。タスク管理にあたって多くの人が作るのがTO DOリスト。しかし、このTO DOリストにはメンタル面にかかわる落とし穴があるといいます。ライフコーチであり、「pure life diary」という自分を整えるための手帳を開発・販売する本橋へいすけさんは、「TO BEリスト」こそ多忙な中でも豊かな人生を実現させる手助けになると話します。TO BEリストの具体的な内容と効果についてうかがいました。 【図解】先延ばしグセがなくなる"ノートの書き方"
忙しい現代社会で、豊かな人生を送るために
現代社会は非常に忙しく、情報過多の時代に生きています。会社における仕事は増え続ける一方で、残業は減らすよう求められるといった事例もよく聞きます。加えて、ITやSNSの進展、AIの普及などにより、私たちは膨大なインプットにさらされています。 このような状況の中で、どうやって人生を豊かにしていくのか......その鍵となるのが、「TO BE思考」の導入だと考えます。 現代の忙しさに追われる私たちは、つい目の前のやるべきこと(=TO DO)に捉われがちです。そこで忘れてしまうのが、本当は自分がどうありたいのか、何を大切にしたいのかという視点です。これが「TO BE思考」です。 人生における大切な目標や、仕事や趣味を通じて何を成し遂げたいのか、社会にどんな価値を提供したいのかといった、自分の「あり方」から物事を考えるアプローチです。 「なりたい自分」というのは、必ずしも大きな目標である必要はありません。大切にしたいことや、自分を大切にする姿勢も含まれます。 現代社会では、「自分が何をしたいのかわからない」「なりたい姿が見えない」と感じる人も多いでしょう。そんなときこそ、自分が大切にしたいこと、普段後回しにしているけれど心のどこかで気になっていることに目を向けてみることが大事です。
なぜ「TO DOリスト」より「TO BEリスト」なのか
「TO DOリスト」ではなく「TO BEリスト」を推奨している理由は、自己肯定感に関係しています。 TO DOリストを使うと、無意識に自分に厳しくなり、減点方式で自分を評価してしまいます。例えば、今日のTO DOリストに10項目を挙げたとしましょう。そのうち9つを達成した場合、客観的にはすごいことです。 しかし、人はどうしても達成できなかった1項目に目がいってしまうんですね。そして、「今日もできなかった」と、できたことよりもできなかったことに焦点が当たってしまいます。 また、仮にすべての項目をこなせたとしても、「やるべきことをやった」という満足感はあっても、自己肯定感が大きく上がるわけではありません。TO DOリストの評価は、常に「予定通りにできたかどうか」という基準に留まり、感動や達成感が生まれにくいのです。 一方、「TO BEリスト」は「自分がどうありたいか」「何を大切にしたいか」を意識するためのリストです。1日の始まりに自分が何を大切にし、どう過ごしたいのかを考えることで、行動が結果だけでなく、その過程やプロセス自体に価値を感じられるようになります。 例えば、1つのタスクしか達成できなかったとしても、その日を通じて自分の大切なことを意識して過ごせたなら、それが大きな満足感や幸福感につながります。 TO BEリストの目的は、結果を追い求めるのではなく、プロセス自体に喜びを見出すことです。 極論を言えば、本当に重要なタスクは手帳に書かなくても覚えているものです。例えば、人生を左右するプレゼンの予定は、きっと誰もがそれを忘れません。夏休みの宿題も、なんだかんだで8月31日に間に合わせる人が多いでしょう。それは「やるべきこと」だからです。 日々の忙しさに追われる中で、後回しにされやすいのが「TO BE」、つまり「自分がどうありたいか」です。だからこそ、この「TO BE」を意識的に手帳に書き出し、日常に取り入れていくことが大切なのです。 (取材・執筆=PHPオンライン編集部 片平奈々子)
本橋へいすけ(pure life diary開発者/ライフコーチ)