世界に蔓延する「孤独」、ソウルが拡大抑止に500億円投入
数千人の孤独死
孤独の問題は、過去数十年で全国的な注目を集めるに至った。若年層の自宅への引きこもりなど、関連する事象の増加が背景にある。彼らはしばしば、何カ月も家から出ずに日々を過ごす。引きこもりの増加に拍車がかかった結果、ある推計によれば2022年時点で最大24万4000人がそうした境遇に置かれているという。 孤独死の件数も伸びている。昨年は3661件に達し、22年の3559件、21年の3378件から増加した。韓国保健福祉部が先週公開した直近の数字で明らかにした。 増加の一因は、保健福祉部による「孤独死」の定義の拡大にあるかもしれない。従来は「一定量の時間」が経過してから発見された遺体のみを「孤独死」としていたが、現在は誰であれ社会的に孤立した状態で暮らす人の死には「孤独死」の語が適用される。家族や親類と縁を切り、自殺や病気で死亡するケースが該当する。 孤独死増加のもう一つの要因は、韓国の人口危機にあると考えられる。高齢化と出生率の低下を受けて、近年は死亡数が出生数を上回るのが常態化している。韓国の全体的な死亡率は上昇中で、この中には孤独死も含まれる。 しかし数字はさらに大きな問題を示唆しており、それは中高年の男性に最も影響を及ぼすとみられる。 保健福祉部によれば、昨年記録された孤独死のうち84%以上は男性で、女性の5倍超に上った。男性の50~60代は全体の半数以上を占め、「孤独死のリスクが特に大きい」層であることが分かった。
韓国人が特に孤独になる要因
孤独は韓国に特有のものではなく、「韓国人が他国よりも孤独だとは言いにくい」と、心理学教授のアン氏は述べた。それでも韓国人に孤独感を抱かせる要因について尋ねると、「他国と比べていくつか異なる点がある」と答えた。 アン氏によれば、一部の文化において孤独は「関係が満たされていない時」に生じる感情だと考えられている。他方、「韓国で人々が非常に孤独を感じると口にする時、彼らは自分に十分な価値がない、もしくは目的を失っていると感じている」 そのような見解は他の専門家からも聞かれる。以前ある専門家がCNNの取材に答えたところによると、ミレニアル世代(1980~90年代生まれ) やZ世代(1996年以降に生まれた年代) の韓国人の多くは批判に敏感な一方、過度に自己批判的で失敗を恐れるという。 今年の6月に実施した調査で、孤独の蔓延は韓国文化の微妙な特徴を反映したものだということが分かった。「関係志向の強調」がそれで、この場合人は周囲にいる他者との関係の中で自己を定義する。結果的に韓国人は「他者もしくは社会に重大な影響を与えていない」と感じると、深い孤独や失敗の感覚を抱くようだ。 これは他国との大きな違いだと、アン氏は説明する。韓国人は社会生活を充実させ、他者と緊密な関係を築けるかもしれないが、それでも「自分が他人と比べて有用な人間か、社会に十分貢献しているか、それとも劣後しているか疑問を抱くと」、孤独を感じてしまう可能性があるという。 当該の調査では、他の要因も明らかになった。具体的には単身世帯の増加、仕事や家族以外での社会的交流の減少、ソーシャルメディアの浸透とそれに伴う不満足感の醸成、韓国社会の競争の激しさ、「成功志向」の文化などだ。自身の目標を果たせない人々の間ではこうした事柄が孤独感に拍車をかける。 「誰もが同じ価値観を過度に追求すると、最後には自分を見失う」とアン氏。「我々の社会は高度に集団的な社会生活を求めるが、そこでは往々にして個人を尊重することができなくなる」。それは人々にとって、寂しさや失敗の感覚に対処するのが難しくなるのを意味する。