【#佐藤優のシン世界地図探索72】「民主的」と「人道」の単語を使うコラムニストとコメンテーターは無知
佐藤 その通りです。日本がアメリカと同盟関係にあるのは、あの国が戦争に強いからです。 ――なるほど。ただ、その日本を率いる岸田首相は、8月14日に自民党総裁選に立候補しないと表明して止めちゃいました。 佐藤 そうですね。あの人はなかなか権力を手放さないと思っていたので、私には意外でした。 ――それはなぜですか? 佐藤 その方が中長期的に自分の影響力を残すことができたというのが、岸田さんの考え方だと思います。 ところで、日本人少女に対する不同意性功罪で沖縄の米兵が逮捕、起訴されたことを、外務省は沖縄県庁に伝えませんでした。 ――はい。沖縄県民は怒っています。 佐藤 この対応は日本政府の不作為でした。警察、外務省は、被害者の人権が重要だから、沖縄県に伝える必要を感じていなかったと言っています。 しかし、これは沖縄への構造化された差別が関係しています。差別が構造化している場合は、差別者は自分が差別者であることを認識していません。今回のように自覚がないから、他者から言われて初めて気が付くんです。 この種の鈍感さは、次の政権になっても続くでしょう。日本の安全保障上、いまもっとも重視しなくてはならないのが沖縄ですが、そのことを日本の政治エリートが理解していません。 ――それをふまえると、新首相の下、総選挙で自民党が負けてしまうと日本はどうなってしまうんですか? 佐藤 自民党が負け、政権交代が起こるとは考えられませんが、あえて頭の体操をしてみましょう。国政選挙で立憲民主党が共産党と一緒になり、第一党になったとしますよね。 ――日本が立憲共産党政権となる。 佐藤 そうなると、外資は外国に逃げます。政権に共産党が入って来ると、金が逃げて、あっという間にNISAが下がります。すると、若者たちの持っている資産は減少しますよね。これは当然大ブーイングになります。自分の財布から金が抜かれるとなれば、皆、絶対に反対しますよ。 ――なるほど。ところで、岸田政権が存続すると、広島ガスがロシアから天然ガスを買っているおかげで、日露関係は良好とのことでした。 しかし、佐藤さんのメルマガ「インテリジェンスの教室」では、プーチンと北朝鮮の関係に触れていました。以下のパートの分析を読むとあれ?と思います。 『プーチン氏は最後に文化や学術面でのロ朝協力の重要性を説く。 【もちろん、私たちは両国間の人道的協力を発展させる。私たちは、ロシアと朝鮮の大学間の学術交流を強化する予定である。相互の観光旅行、文化、教育、青少年、スポーツ交流をさらに拡大する。国や民族間のコミュニケーションを「人間らしく」するものはすべて、信頼と相互理解を強化する。 私は、私たちの共同努力によって二国間交流をさらに高いレベルに引き上げることができ、それがロシアと朝鮮の互恵的で対等な協力関係の発展、両国の主権の強化、貿易・経済関係の深化、人道的分野での交流の発展、ひいては両国民の幸福の向上に寄与すると確信している】 <中略> 本稿を読むと、プーチン氏が北朝鮮の国際的地位を向上させることがロシアの国益に適うと考えていることがよくわかる』 とあります。その一連の行動のひとつが、ロシアの対日圧力が強化されていると見ていいのですか?