今季スペインリーグは首位争いが白熱 首位Rマドリードと3位バルサの勝ち点差わずか5で後半戦
今季のスペインリーグは首位争いが近年では珍しく拮抗している。消化試合に差はあるものの、1位と3位の勝ち点差がわずか5とひしめき合っている。しかし、昨季ジローナが見せたようなサプライズはなく、“ビッグ3”が上位を占めている状態だ。 【一覧】スペインリーグ順位表 上位3チームの勝ち点がこんなにも近い状態で新年を迎えたシーズンとなると、5季前の19-20年シーズンまで遡らなければならない。当時はバルセロナが勝ち点39で首位に立ち、レアル・マドリードが勝ち点37で2位、セビリアが勝ち点34の3位でクリスマス休暇を折り返した。最終的にRマドリードが勝ち点を87に伸ばし、逆転優勝を成し遂げていた。 ■エムバペが本来の姿取り戻す 現在首位に立つのは昨季の王者Rマドリード(19試合13勝4分け2敗の勝ち点43)。前人未到の7冠を目指す中、順調に2タイトルを獲得しているものの、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。 鳴り物入りで加入したエムバペは期待に反してすぐにはフィットせず、中盤はクロース引退の影響が大きく響き、守備陣はカルバハルとミリトンが今季絶望の重傷を負ったことで大打撃を受けた。勝ち点を取りこぼす様子を見て、クライシスが囁かれる時期もあった。 しかし、やっとその状況から抜け出しつつあるようだ。「適応期間は終わった」とアンチェロッティ監督が昨年末に宣言したように、センターフォワードのポジションに慣れてきたエムバペがクリスマス休暇前の公式戦で5試合連続得点を記録し、ようやく本来の姿を見せ始めている。開幕時よりゴールに近い位置でプレーするようになったベリンガムもゴールを量産し、ビニシウスはザ・ベストFIFA2024最優秀選手賞に輝いた通りの実力を示し、ロドリゴも調子を上げるなど攻撃陣が機能し始めた。 さらにバルベルデがミドルシュートで相手の脅威となり、モドリッチが途中出場から流れを変える役割を果たし、チュアメニが再びセンターバックの代役を務めている。また、フラン・ガルシア、セバージョス、ブラヒム・ディアスの控え組、Bチームから加わったアセンシオの奮闘により選手層が厚くなっていることも見逃せない。そして今月、DFの大黒柱アラバが1年以上に渡るリハビリを経て、ようやくピッチに戻ってくることは皆にとって朗報だ。 ■アトレチコ成功の要員は補強 1試合未消化のアトレチコ・マドリード(18試合12勝5分け1敗の勝ち点41)が2位につける。クリスマス休暇前最後の大一番で18年ぶりにアウェーでバルセロナに勝利した。現在、公式戦12連勝中、リーグ戦7連勝中と欧州でも好調なチームのひとつになっている。 成功の要因としてまず挙げられるのは大型補強を行ったことだ。夏の移籍市場で今季のスペインリーグ最多の1億8500万ユーロ(約296億円)を投資し、7500万ユーロ(約120億円)でマンチェスター・シティーからフリアン・アルバレスを獲得したのを筆頭に、ギャラガー、セルロート、ル・ノルマンをそれぞれ3000万ユーロ(約48億円)以上の高値で補強。序盤はうまく噛み合わなかったが、ここに来てうまくいっている。 さらに、重鎮のオブラクとグリーズマンの復活、クラブの将来を嘱望されるバリオスの急成長、監督の三男ジュリアーノ・シメオネの台頭、加えて途中出場の選手たちが活躍したことも大きい。そして、Aマドリードで14季目のシメオネ監督が、ラングレや戦力外のハビ・ガランを再生させたこと、システムを3バックから4バックに変更させたこと、けが人が0人になったことなど、成功の要因は枚挙にいとまがない。総得点は33と多くはないが、総失点は最少の12と堅守を誇っている。 ■ヤマル負傷離脱で勢い落ちる 3位のバルセロナ(19試合12勝2分け5敗の勝ち点38)は多数のけが人を抱えながらも、フリック監督が既存の選手や下部組織の若手の能力を最大限に引き出し、ハイラインを武器に相手の攻撃を封じ込めたことでスタートダッシュに成功した。特にスペインリーグの得点ランキングトップを独走するレバンドフスキ(16得点)、アシスト王のヤマル(9アシスト)、両部門で2位につけるラフィーニャ(11得点6アシスト)がそれぞれ素晴らしい活躍を見せて得点を量産。また、けが人を補うために抜擢されたイニャキ・ペーニャ、カサド、イニゴ・マルティネスも実力を存分に示していた。 しかし、最大の武器だったハイラインが時間の経過とともに攻略されていき、ケアレスミスも増え、昨年の最優秀若手賞を総なめにしたヤマルが負傷離脱したことで、その勢いが失われていく。直近のリーグ戦で2連敗を喫して首位陥落、ここ7試合でわずか1勝、4位ビルバオに勝ち点2差まで迫られるという負のスパイラルに陥った状態で24年を終えることになった。 新年を迎えても、サラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)の問題により、ダニ・オルモとパウ・ビクトルの登録が抹消され、後半戦で起用できない可能性が浮上するなど問題は山積みだ。 ■過密日程で取りこぼし増加も Rマドリードのアンチェロッティ監督は前半戦の各チームの戦いを振り返り、「優勝に必要な勝ち点は90以下になる」と予想した。直近10シーズンの優勝チームで最も勝ち点が少なかったのは、20-21年シーズンのAマドリードと21-22年シーズンのRマドリードで、ともに勝ち点86。今季は上位陣が例年よりも拮抗しているため、その言葉通りになり得るかもしれない。 束の間の休息を終えて25年を迎えた選手たちはこの後、スペインリーグ、スペイン・スーパーカップ、国王杯、欧州カップ戦といった複数の大会を並行して戦っていくことになる。過密日程に突入することで取りこぼし増加が予想される中、その厳しい状況をどのチームがうまく乗り切るのか、後半戦も白熱した展開が期待できそうだ。【高橋智行】(サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行/日刊スポーツコム)