見えない鳥インフル、ヒト感染1件なのはCDCが検査していないから
(ブルームバーグ): そのウイルスは牛の間で急速に感染を広げ、スカンクやマウンテンライオン、アカギツネにも拡大している。
全米の哺乳類の間で強い感染力を見せている鳥インフルエンザ。ヒトの感染報告は今のところ、テキサス州が独自に実施した検査で判明した1例だけだ。
恐らくそれは、人間を対象とした鳥インフルエンザ検査が極めて限られているからにほかならない。各州政府と農家の事情によって、米疾病対策センター(CDC)は実地での検査ができない。従ってヒトへの感染は全容がつかめていない。
連邦当局の感染症対応に、鳥インフルエンザは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後で最大の課題を突きつけるとみられている。人間の検査が進まない事態は、当局の体制を脅かしかねない。最近感染が判明した患者は、現在回復途上にある。この患者が経験した症状は目の充血だけだった。しかし鳥インフルエンザは感染者の半数を死に至らしめると知られており、感染が広がれば危険な事態に発展する恐れがある。
CDCは招へいされることなく勝手に実地調査を行う権限を持っていない。家畜の感染が確認された各州当局は、CDCに調査を依頼していないという。
移民の労働力に依存する民間の酪農家には、CDC調査官の受け入れに消極的にならざるを得ない事情がある。移民労働者はしばしば政府当局者との接触を警戒する。陽性反応が出た場合は収入が絶たれる心配がある。農家としても利益率の低いビジネスに悪影響が出ることを懸念して、牛の感染検査を渋る可能性がある。
スタンフォード大学で感染症を研究するアブラール・カラン氏は「CDCは必要な検査や調査作業を行えない」と指摘。「これは極めて重大で、目に余る問題だ」と語った。
鳥インフルエンザが一般社会に与えるリスクは、現時点で低いとCDCは言う。ヒトからヒトへの感染効率は低いというのが、その理由だ。しかし鳥インフルエンザは相手が牛であれヒトであれ、いったん感染すれば、変異して哺乳類の呼吸器細胞への適応性を高める機会を得る。