年の瀬に急増「カギ紛失」、弱みを狙った悪徳カギ開け業者に注意…正しい見分け方は
飲み会でついついお酒が進み、楽しい気分で帰宅したらカギを落としたことに気づき、さらに自宅には誰もおらず大慌て・・・といった経験はないだろうか。近頃、そんな人の弱みにつけ込む「悪徳カギ開け業者」によるトラブルが急増している。 【写真】国民生活センターによる注意喚起 X(旧ツイッター)上では大阪をはじめ実際に被害にあった人々の体験談が投稿され、国民生活センターも悪徳業者への注意喚起を投稿している。一方で、「本当にプロにカギを開けてもらう場合はそれなりの料金になるのでは」という声も。 とはいえ素人目にはそのあたりの見極めは難しく、ましてや焦っている時は判断力も鈍ってしまうだろう。そこで、関西はもちろん全国に365日駆けつけてくれるカギの専門組織「一般社団法人カギの110番・カギの救急車」に、怪しい業者の見分け方や適切な価格帯について詳しく教えてもらった。 ■「低価格」プッシュの業者には要注意 ──実際のところ、どういった事例が発生しているのでしょうか。 「開錠3000円~」という広告を目にし、「高くても1万円以内だろう」と連絡したところ、まず「現場を見ないとわからないのですぐに向かいます」とおおよその料金は告げられないまま業者が到着。作業が始まった段階で「これは特殊な鍵なので10万円です」といきなり高額な請求をされ、キャンセルしようとしても「出張代・調査費として1万円が必要」と言われ、断るのが難しくなる・・・という悪質業者のトラブルは耳にします。 ──なるほど。やはり「低価格」ばかりを強調する業者の場合は注意が必要なんですね。ほかに悪質業者の特徴はありますか? 前提として、専門の技術者が直接ご自宅で対応する場合、1万円以下での対応は難しいということを理解していただきたいです。つまり、それ以下の表示価格は「おとり価格」の可能性が高いです。さらに「低価格」を前面に出す業者は怪しいケースが多いので、注意が必要です。 彼らは「公式」「上場企業」「見積もり無料」といった信頼されやすい言葉を巧みに利用しています。また、「満足度NO.1」や「おすすめしたいNO.1」といった表記も、信頼性の低いリサーチ会社を利用して得た称号である場合があるため、注意が必要です。 また、悪質業者は高額なネット広告を出し依頼を独占する手口を取ります。そして口コミや悪評が広まると、会社名や屋号を変更し同じ手口を繰り返します。ネット上での営業が中心なので名称変更は非常に簡単ですし、同じグループ会社が複数の名前を使って営業している場合もあります。 ──そもそも、カギ開けの一般的な相場はどれくらいなんでしょうか? 例えば一般の住宅の場合だと、おおよそ開錠1万8000円(作業費1万5000円+出張費3000円)が目安となります。さらに防犯性能の高いディンプルキーに変更する場合や夜間の対応、2ロックなどが合わさると本当に高額になるケースも。このように「作業費が高額=ボッタクリ」というわけではないので、余計に問題が難しくなってしまうというわけですね。 ──大体の価格帯を知っているといざという時の参考になりそうです。それでも悪質な業者にあたってしまった場合、どう対処すればいいんでしょうか。 まず、一度料金を払ってしまった場合、返金されるのは難しいと思ってください。納得がいくまでお金を支払わないこと、業者には「後日振り込む」と説明し、絶対にその場で支払わないことを徹底してください。また、民事不介入なので必ず相談に乗ってくれるとは限らないものの、警察に相談することも有効です。 ──もし払ってしまったらその場合どうすればいいんでしょうか。 本当にボッタクリ価格ならクーリングオフも可能なので、請求書をもって消費者センターに相談することもひとつの手です。泣き寝入りになってしまうこともありますが、多くの声が集まれば「営業停止処分」にもなるので無駄ではありません。とはいえ悪徳業者は名前を変えて営業するので、イタチごっこになりますが・・・。 ──逆に、安心できる業者の選び方はありますか? 信頼できる地元の鍵屋さんは、フリーダイヤルのほかに市外局番のある連絡先を記載していることが多いです。広告から電話をかける場合はこの点を確認することで、安心して依頼できる業者を選ぶことができます。 広告で「全国対応」をうたい、フリーダイヤルが記載されている鍵屋には注意が必要です。実際にはこれらの多くが鍵屋ではなく、「鍵屋紹介業者」であるケースがほとんどです。 ──なるほど、電話番号でも確認ができるんですね。最後に、カギの紛失が増える年の瀬に向けて、心構えを教えて下さい! ネットに慣れていない方や緊急時で慌てている場合は、悪徳業者を瞬時に見分けるのは非常に難しいかもしれません。ですが、必ず会社概要や住所をチェックし、実際に店舗があるか、本当に鍵屋であるかを確認しましょう。鍵の情報は、最高レベルの個人情報に相当し、見知らぬ業者に知られるリスクもあります。 最近では不正な合鍵を使った侵入事件も増加しているので、依頼する業者の身元がしっかりしていることがより重要となっています。地元で長年店舗を構え信頼のある鍵屋に依頼することが、安心の第一歩です。 ◇ 年始年末は久しぶりに運転をした人がうっかり車内にカギを閉じ込めてしまう「インロック」や、旅先でスーツケースをあけようとしたらカギがないという観光客からの開錠依頼など、さまざまなカギ関連トラブルが頻発する時期なのだとか。「普段使っていないものを使おうとして失敗が増えるシーズンなのかもしれません」と担当者。いくら楽しい年末年始でも、ハメを外しすぎないように気をつけたい。 取材・文/つちだ四郎