植田総裁の発言が円安容認と受け止められ1ドル160円台まで円安が進行:政府は為替介入実施か
24時間のうちに約3円の急速な円安進行
4月26日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合の後に、為替市場では円安が一段と進んだ。会合前には1ドル155円台前半で推移していたドル円レートは、決定会合で政策変更が見送られたことに加え、会合後の記者会見での植田総裁の発言から、日本銀行は円安に対する警戒心が弱いとの見方につながり、1ドル156円台まで円安が進んだ。 円安の流れは海外市場でも続き、米国市場の終盤には、1ドル158円台まで円安が進行した。24時間のうちに約3円もの急速な円安となった。1ドル160円台乗せも時間の問題となってきた。 円安の流れに弾みがつく最初のきっかけとなったのは、米国時間の25日に、イエレン米財務長官が、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と述べ、日本政府の為替介入をけん制したことだ。 2022年に、政府は米国が難色を示す中でも為替介入を実施したとみられることを踏まえると、今回、イエレン財務長官が日本の為替介入をけん制する姿勢を見せるなかでも、介入に踏み切る可能性はなお十分に考えられる。政府は、円安阻止に向けた対応をしていることを企業や国民にアピールすることが政治的には求められており、その観点からも、いずれ為替介入に踏み切る可能性は引き続き高いだろう。 しかし、米国当局から牽制を受けたことは、為替介入実施に向けて一定程度の制約となることは否定できないところだ。
円安で日銀の追加利上げが前倒しされるとの観測
日本時間26日に、政府が為替介入を実施しづらくなったとの観測が生じ、円安進行リスクは高まった。ただしこの時点では、決定会合で日本銀行が長期国債の買い入れ減額を実施するとの観測があり、また、会合後の記者会見で植田総裁が、円安をけん制する発言をするとの期待があったことが、円安進行をなんとか食い止めていた面があった。 しかし実際には、決定会合では長期国債の買い入れ方針には変更なく、また先行きの物価見通しも予想通りであった。さらに、記者会見で植田総裁は、円安進行をけん制する発言をしなかったことから、円安の流れが強まってしまった。 植田総裁は4月18日のG20会議後の記者会見で、「円安が基調的な物価に無視できない影響を与える場合には、金融政策で対応する可能性がある」との主旨の発言をした。金融市場では、円安進行を受けて日本銀行の追加利上げを前倒しする、あるいはそれを示唆するような発言を総裁が行うことで、円安の流れが食い止められる、との期待が浮上していた。